東芝のさっぱり要領を得ないIR

 昨日はオリンパスの大変に問題あるIRについて書きましたが、実は同じ日(5月8日)の取引終了後に東芝も「さっぱり要領を得ない大変に不安にさせる」IRを出していました。

 そのIRとは「第三者委員会設置のお知らせ」「業績予想の修正に関するお知らせ」「剰余金の配当(期末)に関するお知らせ」がセットになったものです。

 要するに東芝では、一部のインフラ関連の工事原価が過少に見積もられ、工事損失(引当金を含む)が適時に計上されていない等の事象が判明しており、また更なる調査を必要とされる事項も判明したため、これら事実関係の詳細調査および発生原因究明のために中立・公正な外部の専門家から構成される第三者委員会を設置するということと、2015年3月期の決算短信は期限の5月15日までに提出できず、6月まで遅延するというものです。

 またすでに発表していた2015年3月期の通期予想は(営業利益3300億円、経常利益2500円、純利益1200億円など)取消して未定としてしまいました。要するに地面に埋まっているのが爆竹か原爆かわからないということです。

 また過年度の決算を修正する必要も示唆されていますが、そうすると常識的には第三者委員会(まだ構成委員が選任も推薦もされていません)による調査報告書を受けてから過年度の有価証券報告書(少なくとも時効になっていない5期分)を修正したうえで、2015年3月期の決算短信を6月中旬までに、有価証券報告書を6月末までに提出する必要があり、スケジュール的には大変な綱渡りとなります。

 実際には5月15日までに決算短信が提出されなければ(されないことが確定的ですが)管理銘柄に割り当てられ、2015年3月期の有価証券報告書を6月末までに提出できなければ上場廃止となるリスクがあるなど、かなり危険なケースを想定しておく必要もあります。

 

 4月3日には同じ事態に対処するために東芝の室町会長を委員長とする特別調査委員会が設置されていましたが「手におえない」と判断したのでしょう。

 本誌は最近の必要以上にコンプライアンスを重視する風潮や、何か問題が発覚すれば「とにかく大物ヤメ検を委員長に頂く第三者委員会を設置して調査してもらえば最悪の事態にはならない免罪符となる」と考えられていることや、何よりも大変にお粗末で明らに会社寄りの第三者委員会・調査報告書が多いことなど、決して好ましいものであるとは思っていません。

 しかし東芝が、この本当に綱渡りとなるタイミングで第三者委員会の設置を決めた理由は、特別調査委員会の形式的な報告では誤魔化しきれない深刻な事態であることがわかってしまい、サラリーマンばかりの東芝現経営陣が責任逃れに走ったからと考えます。

 どうも地面に埋まっていたのが爆竹より原爆に近いものだったのでしょう。

 そもそも発生しているはずの「過去の決算数字との大幅な差異」とは、単なる不注意によるものなのか、悪意のある(東芝内部あるいは外部の)人物の犯罪行為なのか、さらに発見したのが内部のチェック機関なのか、監査法人などの外部の機関なのか、それとも内部告発なのか、要するに東芝のさっぱり要領を得ないIRだけでは何もわかりません。

 それで今後の展開を予想することは大変に難しいのですが、直感的に第三者委員会の調査報告書とは穏便で玉虫色で重要なことは何も明らかにされないような気がします。

 しかしその調査報告書が出されるのを待って過年度の決算修正と2015年3月期の決算短信有価証券報告書提出が粛々と行われ、もちろん上場も維持されて事件化することなど絶対になく、そのうち何事もなかったように忘れられてしまうような気もします。

 その理由は2つあり、東芝は日本有数の(買収したつもりになっているウエスティン・ハウスを入れれば世界有数の)原発メーカーであることと、2014年12月末時点で長短合わせて1兆9000億円以上の外部負債(主に銀行借り入れ)があることです。

 つまり第三者委員会が調査中に証券取引等監視委員会東京地検特捜部が乗り込んできて強引に事件化してしまい、電光石火の速さで中核事業だけをセガ・サミーに譲渡させたインデックスのケースとは全く違います。

 さらには事件化して何人かの逮捕者を出したものの、第三者委員会の調査報告書・過年度有価証券報告書の訂正・上場維持・銀行からの役員派遣(2名)・2500億円以上の貸付金回収と粛々と進んだオリンパスのケースとも違うはずです。

 経済事件とは、そもそも事件化するのかどうかも含めて、明らかになったときには結論が決まっているものであることを、東芝のさっぱり要領を得ないIRから改めて感じました。