大胆推測! シャープ資本増強策の裏側

 シャープが5月14日に2015年3月期の決算短信と、優先株の発行による資本増強策などを発表しました。

 すべて事前に予想が報道されていたため改めて驚きませんでしたが、決算数字は営業利益が480億円の赤字(前期は1085億円の黒字)、経常利益が965億円の赤字(同532億円の黒字)、最終純利益が2223億円の赤字(同115億円の黒字)となり、連結純資産が445億円まで減少しました。単体ではすでに60億円ほど債務超過に陥っています。

 また今期(2016年3月期)の通期予想営業利益が800億円というのも、「冗談」と受け取っておくべきでしょう。

 しかし問題は優先株の発行による資本増強策の方です。メインバンクのみずほ銀行三菱東京UFJ銀行に各1000億円のA種優先株、JISなる日本政策投資銀行メガバンク3行・三菱商事・どういうわけかドイツ銀行東京支店が出資するファンドに250億円のB種優先株を割り当てます。

 まず優先株はA種B種ともに議決権はないものの累積型で、配当は遅れても必ず支払わなければならず、もちろん普通株の配当(まあ支払われることはありませんが)に優先します。またB種優先株の配当は未払い分も含めて、A種優先株の配当に優先します。

 

 A種優先株の配当は6か月・円TIBOR(0.25%くらいです)プラス2.5%(つまり現時点では2.75%程度)であり、最大の問題は平成33年7月1日以降(優先するB種優先株の元本と未払い配当と経過配当をこえる財産が有ればですが)額面の110%に未払い配当と経過配当を加えた金額で「保有者」に買取り請求権が発生するところです。

 さらにA種優先株には普通株への転換条項が付けられており、平成31年7月1日以降、半年ごとに直近30営業日の株価加重平均(VWAP)の95%に転換価格が修正され、最低転換価格は100円となります。

 現在の発行株数が約17億株なので、2000億円が100円で転換されると20億株となるため、確かに書かれているように最大希薄化が約118%となります。

 そしてみずほ銀行三菱東京UFJ銀行も、この各1000億円の払込金全額をそれぞれ、貸付金の回収に充ててしまい、シャープには1円も残りません。

 財務制限条項に抵触する恐れがあるからですが、これなら優先株など発行せずに「死にもの狂い」で財務制限条項(たぶん債務超過転落)を回避すべきと考えます。まあそれができる経営者ならこんな状態になっていないでしょうね。

 B種優先株による250億円は確かにシャープが使える資金ですが発行条件はもっと「えげつない」もので、まず配当が平成30年3月までが7.0%、それ以降が8.0%と高利貸し並みです。

 普通株への転換は平成27年7月1日以降(つまり払い込んだらすぐに)可能となり、転換価格は半年ごとにA種と同じVWAPの90%に修正されますが、実はその額面は平成27年7月から平成28年6月までは額面の1.05倍、その後は徐々に増加して平成32年7月以降は1.40倍になり、もちろんそれに未払い配当と経過配当が加えられた金額が普通株に転換されることになります。

 平成32年7月以降は配当分を無視しても250億円の発行額に対して1.4倍の350億円が下限価格の100円で転換されると3億5000万株が発行されることになり、確かに書かれているように最大希薄化率が20.8%となります。

 もっと「えげつない」現金による買い取り条項も付けられていますが省略します。だったら利率6%くらいの社債を発行すればよいと考えますが、無駄な議論なので止めます。

 A種もB種も、シャープは貸株がふんだんに調達できるため、「えげつない」発行条件以外にアービトラージによる収益が「ほぼ無限に」追加されます。

 さて、いくら瀕死のシャープに懇願されたといっても、日本人の銀行員がここまで「えげつない」発行条件を考え出して押し付けてしまうものでしょうか?

 長く国際業務に携わった本誌の直感ですが(あくまでも直感で推測ですが)、この「えげつない」発行条件はアングロ・サクソン人かユダヤ人によるもので、欧米系の証券会社がヘッジファンドを巻き込んで、瀕死のシャープのサラリーマン経営者とシャープに倒産されたら困るメインバンクを焚き付けて仕組んだもののような気がします。

 2012年12月発行のソニー新株予約権社債のように、株式への転換権のところだけをリパッケージして「外出し」するような気がします。A種は転換開始まで4年ありますが、B種はすぐに転換できるためとくに格好の「素材」となります。

 だとするとまたしても「最もおいしい部分」を海外業者とヘッジファンドに持って行かれてしまうことになりますが、今度ばかりは本誌の推測が外れてほしいものです。