ソフトバンクの問題点

 5月11日に発表されたソフトバンクの2015年3月期連結決算は、売り上げが前年比30.1%増の8兆6702億円、営業利益が同8.8%減の9827億円、純利益が32.1%増の7636億円となりました。

 決算IRでは、営業利益は前年度に計上していたガンホーなどの子会社化に伴う一時的な利益2538億円が剥落したために減益になったと強調していますが、今期はアリババ上場に伴う持ち分変動利益が5996億円あったことは「さりげなく」書いてあるだけです。

 また80%を保有する米スプリントの米国における決算は、2014年10~12月期に減損に伴い23億7900万ドル(2855億円)の純損失に沈み、通期(2014年1~12月)は33億5000万ドル(4020億円)、2015年1~3月期でも2億2400万ドル(268億円)のそれぞれ純損失となっているはずです。

 ところがソフトバンクの連結決算では、米スプリントの純損失の大半を占める減損を取り込んでいません。これは日米会計基準の違いと説明していますが、買収した子会社の減損は「のれん代」の範囲内という解釈で、収益化のめどが立たなければ買収金額の216億ドル(当時は円高だったため1兆8000億円)を大幅に減損する必要が出てきます。

 ドル箱であるソフトバンクモバイル部門収益は5473億円(前年比301億円増)と相変わらず絶好調で、ソフトバンクとは典型的な規制に守られた国内携帯電話事業で稼いだ収益を、日本の消費者に還元することなく、相変わらず気前よく海外投資に「ばら撒いている」ことになります。

 いつも書くことですが、ソフトバンクが適正な競争で稼いだ収益を海外投資にばら撒いているのであれば「お好きにどうぞ」となりますが、現状の国内携帯電話事業の規制に守られた「ぼろ儲け」をばら撒いているのであれば「順番が違うだろう?」となります。

 さて決算発表があった5月11日に、もう1つ重要な発表がありました。

 ソフトバンク(7月1日からソフトバンクグループ)は、昨年10月にグーグルから引きぬいたニケシュ・アローラ氏を代表取締役副社長に抜擢し、実質的に孫正義代表取締役社長の後継者に据えました。

 同時に2015年4月に国内通信会社4社が合併して発足したソフトバンクモバイル株式会社の代表取締役兼CEOの宮内健氏は、ソフトバンクグループの代表権を外され取締役となりました。

 アローラ氏の能力はわかりませんが、同氏がソフトバンク入りしてわずか6カ月ほどの間に矢継ぎ早に海外企業7社を約2300億円で買収しています。

 その7社とは、レジェンダリー・エンターテインメント(米国の映画会社、270億円)、スナップディール(インドのネット通販会社、680億円)、ANIテクノロジーズ(インドの配車サービス会社、230億円)、ロコン・ソリューションズ(インドの不動産仲介サイト、110億円)、トコペディア(インドネシアの通販会社、110億円)、クラブタクシー(シンガポールの配車サービス会社、300億円)、トラヴィス(中国の配車サービス会社、700億円)となっています。

 アローラ氏はインド人なのでインドの会社が多いようですが、ちょっとみただけでも「こんなのばかり買って大丈夫なのかなあ?」とか「ソフトバンクとのシナジーがあるのかなあ?」などと心配になってしまいます。

 今回のアローラ氏の「昇格」で、そのピッチはますます加速してしまうことになります。

 もう一度だけ繰り返しますが、これらの買収資金は日本の消費者が支払う「規制に守られた割高な通話料」で賄っているのです。

 米スプリントを買収したときも、同じように日本の消費者が支払う割高な通話料を米国に還元していると批判したのですが、それでもスプリントは携帯電話会社なので全く理解できないことはありませんでした(注)。

(注)日米の携帯電話市場は基幹システムが全く違うため、実際にはシナジー効果は全くありません。全く別の仕事をしている会社です。

 しかし日本の消費者は、インドの配車会社や不動産仲介サイトを「べらぼうな値段で」買収するために、割高な通話料を支払っているわけではありません。

 それがソフトバンク最大の問題点なのです。