ソフトバンクの問題点  その2

 先週(5月22日付け)同題記事を書いたところ、びっくりするほどたくさんのコメントをいただきました。しかも大半が本誌の主張に批判的なコメントであるため、説明不足だったところはもっと正確に、本誌の主張したいポイントはさらに丁寧に主張するために、追加記事を書くことにします。

 まず、通信料の問題と投資の問題をわけて考えないと支離滅裂になるとのコメントをいただきました。

 ここは明らかに説明不足だったところで、先週の記事で最も強調したかったところは寡占状態による明らかに割高な通信料で「ぼろ儲け」した利益は、まず国内の利用者に対するサービス向上と「可能な限り」通信料の引き下げで還元すべきということです。

 ソフトバンクの2015年3月期決算では、国内の割高な通信料の恩恵が反映されているソフトバンクモバイル部門収益は5473億円(前年比301億円増加)もありました。

 これはもちろんソフトバンクだけが「ぼろ儲け」しているわけではなく、同じく2015年3月期のドコモの純利益は4100億円、KDDIは4279億円もあります。

 ドコモとKDDIソフトバンクほど派手に投資事業を行っているわけではなく、純利益のほとんどが割高な通信料による「ぼろ儲け」だと思われます。

 つまり3社で1兆4000億円ほど「ぼろ儲け」していることになり、やはり規制に守られた利益がかなり含まれていると考えられます。

 

 トヨタ自動車は1社で2兆円以上も「ぼろ儲け」しているではないか?となるかもしれませんが、少なくともトヨタ自動車はどこにも規制に守られることなく、下請けを含む国内の雇用を守りながら世界を相手に勝負して稼いだ2兆円です。

 比較する方が「失礼」です。

 次に、ソフトバンク孫社長は大変に優秀な投資家で、実際にアリババでは8兆円もの含み益を生み出し、成長が期待できるインドに投資することは全くおかしくないとのコメントを多数いただきました。

 これもソフトバンクの過去の投資実績にケチをつけているのではなく、この国内の割高な通信料による「ぼろ儲け」を、国内の利用者へのサービス向上や通信料の引き下げを行うことなく、優先して海外投資に使うことは「ちょっと違う」と言いたいだけです。

 いくらアリババで8兆円も含み益が出ても、仮に最近投資したインドや中国の新興企業が将来大きな含み益をソフトバンクにもたらしたとしても、日本のソフトバンクの利用者には一切メリットがありません。

 つまり「アリババで8兆円も含み益が出たのだから、ソフトバンクの通信料を半分にしてくれ」とも「海外投資を行うなら国内の利用者からのぼろ儲けをつぎ込むな」とも言う筋合いのものではなく、当然に国内の通信料は割高なままであり、国内の利用者からの「ぼろ儲け」は海外投資につぎ込まれます。

 それでも投資が成功すれば株価が上昇するからよいではないか?と考えられます。

 それは事実ですが、本日(5月26日)のソフトバンクのPBRは3.09倍です。ドコモは1.6倍で、KDDIは2.3倍です。

 仮にアリババの含み益の8兆円があるとして(他にもヤフー・ジャパンなどの含み益もあるはずですが、スプリントは相当の減損が必要のはずで差し引きではゼロとして)、税金分等を考慮して半分の4兆円をソフトバンクの資本勘定に加えたとすればPBRは1.3倍となります。

 日経平均採用銘柄の平均PBRは1.4倍なので、ソフトバンクの株価はアリババの含み益まですでに反映しているともいえます。

 ソフトバンクを上場している投資ファンドと考えれば、投資ポートフォリオの価値よりも(投資ファンドとしての)株価が大きく上回るということはないはずです。

 つまり現在のソフトバンクの株価とは、投資ポートフォリオの価値までも収益を上げ続けることを前提とした事業会社の株価として評価してしまっていることになります。

 海外投資の是非を考えるまえに、少し冷静になってみる必要がありそうです。