FIFAに米司法省が捜査のメス

 米司法省は5月27日、FIFA国際サッカー連盟)の副会長2名を含む幹部9名を、スポーツ関連会社などから賄賂を受け取った罪などで起訴し、そのうちFIFAの会合でチューリッヒに集まっていたジェフリー・ウェッブ(英領ケイマン諸島)とエウヘニオ・フィゲレド(ウルグアイ)の両副会長を含む7名を逮捕しました。

 またFIFAの幹部以外では、アメリカとアルゼンチンのスポーツ関連企業の幹部ら5名も起訴されていますが、その企業名や逮捕されたかどうかなどは不明です。

 起訴されたFIFA幹部らがすでに受け取った、あるいは受け取ろうとしていた賄賂は1億5000万ドル(185億円)だそうですが、ほんの氷山の一角でしょう。

 FIFAが世界のサッカー界に君臨する「カネまみれの伏魔殿」であることは改めて驚かされることではありませんが、特筆すべきは捜査に踏み切ったのがサッカー後進国(つまりFIFA利権から遠い)米国の司法省だということです。

 米司法省は、こういった不正資金の受け渡しが米国の銀行を通じて行われていたため、犯罪性資金を米国銀行システムで決済したマネーロンダリング事件として介入しました。また米司法省は最近スイスの銀行を立て続けに告発しており、スイス司法当局も米国に協力せざるを得なかったようで、実際に7名を逮捕しました。

 米国では、つい先月に議会承認されたばかりのロレッタ・リンチ米司法長官が「今回の起訴は取り組みの端緒に過ぎない」「スイスとの犯罪者引き渡し協定に基づき、速やかに7名は米国に送還される」と話しています。各逮捕者の国籍によっては簡単でないケースもありますが、ゴリ押しで全員を米国で拘束してしまうのでしょうね。

 ちなみにFIFAの収益はベールに包まれていますが、2007年~2010年の4年間の総収入が42億ドル(5160億円)、その87%の36.5億ドル(4500億円)が2010年に開催されたワールドカップ南アフリカ大会の収入であり、その大会でFIFAが支払った経費はわずか13億ドル(1600億円)だったと推定されています。

 つまりFIFAとは「ぼろ儲けの伏魔殿」でもありますが、今回摘発された1億5000万ドルの賄賂は(もちろん氷山の一角ですが)FIFAの財布とは関係なく「副会長ら幹部の懐に入ったカネ」となります。

 ところでFIFA及びその幹部に賄賂を提供していたスポーツ関連企業の中に米国企業のナイキが含まれている可能性があり、そのナイキFIFAにおけるライバルがドイツのアディダスなので、この2社に対して米司法省がどう対処するかが大変に注目されます。

 余談ですが日本の電通も「随分と蒼くなっている」はずです。まあ数年前に亡くなった某元社長と、同じころに退任した某元専務取締役に責任を押しつけて「知らん顔」を決め込むのでしょうね。

 さてFIFAの現会長は、1998年からその座にあるスイス人のゼップ・ブラッターで、今回も早速「米司法省の摘発を歓迎し、腐敗が一層されることを願う」などと発言していますが、もちろん額面通りに受け取るわけにはいきません。

 もともとスポーツ記者だったブラッターは1975年にFIFA事務局に入り、当時のアベランジェ会長(ブラジル)とアディダスに取り入りトントン拍子に出世します。1998年に会長選挙では1国1票だったので弱小国に現金をばらまき、本命だったヨハンソン(スウェーデン)に競り勝ちました。

 次の会長選挙は本日(5月29日)行われる予定で、ブラッターは5選を目指します。当初はポルトガルのスター選手だったルイス・フィーゴも有力候補でしたが「これは選挙ではない」と降りてしまい、副会長であるヨルダンのアリ・フセイン王子との争いになります。

 ブラッターはすでにアフリカ54か国の支持を取り付けており(どうやったかの説明は不要ですが)圧倒的に有利であることは間違いありませんが、選挙直前に不祥事が暴露されるなどクーデターも予想されていました。

 その会長選挙のわずか2日前に、ひょっとしたらクーデターが実行されるはずだったチューリッヒの会場で、今回の逮捕劇となったわけです。単なる偶然とは思えず、ブラッターが米司法省と「取引」して、自らの免責を条件にFIFAに捜査当局を引き入れて不穏な動きもあるライバルらを蹴落としたとも考えます(あくまでも本誌の考えです)。

 FIFAでも、2018年ワールドカップ(ロシア)と2022年ワールドカップ(カタール)の開催地決定を巡り不正があったと独自に調査していました。もちろんFIFA内部の勢力争いのためですが、実は2002年のワールドカップでもいったん決定していた日本開催が、韓国側の猛烈な札束攻勢で直前に日韓共同開催にされてしまいました。

 実際に関与していた在米韓国人ロビイストから直接聞いた話です。

 今後の注目点とは、「米国巨額罰金ビジネス」がどこまでFIFAに切り込めるかと、5期目に入るはずのブラッター会長が無事に生き残れるのかと、ナイキ 対 アディダスの経済代理戦争の行方といったところでしょう。

 ただ表面的にはこれ以上の大きな騒ぎにはならず、密室での謀議・謀略が続くことになりそうです。