最悪の事態となったギリシャ情勢

 今月末のデッドラインを目前にしたギリシャ政府と国際債権団(EU、ECB、IMF)の駆け引きは、デッドライン1日前に「思わぬ結果」となってしまいました。

 デッドラインとはIMFへの15億8000万ユーロ(2100億円)の返済期限と、2012年3月に発効した金融支援(72億ユーロの未実行がある)の期限切れが、ともに到来する6月30日のことでした。

 これまでギリシャIMFへの返済ができなくなってデフォルトするとか、ユーロ離脱に追い込まれるなどと懸念されていましたが、現実はデッドライン1日前の本日(6月29日)にECBがギリシャ中央銀行を通じてギリシャ国内の銀行に供給している「緊急流動性支援(ELA)枠」の拡大を拒否してしまいました。

 そうするとギリシャ国内の銀行は急増している預金の引き出しに対応できず(流動資産がないから)、やむなく本日から1週間の営業を停止してしまいました。また営業再開後も預金の引き出しを1日あたり60ユーロに制限するなど、厳しい資本規制を余儀なくされます。

 直接の原因は6月27日午前1時(現地時間、以下同じ)に、ギリシャのチプラス首相が金融支援の条件としてEUから求められている財政再建案の受け入れについて、7月5日に国民投票を実施すると突然に発表したからです。

 もともと過去の金融支援の条件になっていた緊縮財政を「反故にする」と公約して政権についたチプラス現政権は、「ユーロの仕組みと信任」を人質に取っているため国際債権団はいずれギリシャに妥協するはずと楽観視していたのですが、いよいよ行き詰まると今度は(金融支援の条件となる)緊縮財政の受け入れは国民投票で決めると見事に責任逃れをしてしまいました。

 このあからさまな時間稼ぎと責任逃れに国際債権団が態度を硬化させ、一切の支援交渉を打ち切ってしまいました。

 

 ここまでならギリシャ政府も「想定の範囲」だったはずです。デフォルトしてもユーロ離脱となっても(簡単ではありません)、すぐにギリシャ経済や金融市場の「息の根が止まる」わけではなく、時間をかけて債務免除などの有利な条件を引き出すことも可能です。

 しかしELA枠の拡大まで拒否され銀行の営業停止に追い込まれるとは想定していなかったはずです。これではギリシャ経済や金融市場の「息の根がすぐに止まってしまう」からです。

 つまりギリシャ政府にとっても、世界の金融市場にとっても「ほとんど想像もしていなかった最悪のケース」になってしまいました。もちろんチプラス現政権が状況を読み違えたため、結果的に世界の金融市場にもギリシャ国民にも大変な混乱を与えてしまいました。

 本日(6月29日)の日経平均は596円安の20109円、先週末に追加金融緩和に踏み切った中国の上海総合指数も139ポイント安の4053ポイント、欧州株式市場も軒並み急落となっています。

 さて、ここからどうなるのでしょう?

 まず資金供給をほとんど絶たれたギリシャ経済は壊滅的な状況となり、遠からずチプラス現政権はクーデター的に政権を追われ、親EUの暫定政権に移行すると考えます。

 そして緊縮財政を受け入れて支援再開となり、ギリシャのユーロ離脱もありません。

 もともとEU当局とすれば大命題の財政再建にあからさまに反対する政権がユーロ加盟国にいること自体が危機的な状況であり、ギリシャ国民の手で「排除」させようと考えたはずです。
 
 そこへおあつらえ向きに国民投票が飛び出したため、一気にギリシャ経済と金融市場の息の根を止める「外科手術」に踏み切ったと考えます。

 しばらくは欧州株式の下落、ユーロ安(円高)となるはずですが、日本の株式市場もまもなく落ち着きをとり戻すと考えます。ギリシャ問題はあくまでもギリシャ国内それに一部のユーロ圏に限定される問題だからです。