オリンパス事件の光と影 その17

 本日は久々にヘッジファンドの話題にすると予告していたのですが、(ご指摘も頂いたように)オリンパス事件に関する判決が言い渡される日だったので、急遽差し替えました。

 オリンパス事件で巨額損失隠しの「指南役」とされ、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)などに問われていた横尾宣政氏ら3名に対する判決が、本日(7月1日)東京地方裁判所・刑事第15部(芹沢政治裁判長)で言い渡されました。

 横尾氏に懲役4年、罰金1000万円、残る2名のうち1名に懲役3年、罰金600万円の実刑判決が言い渡され、残る1名も執行猶予つきの有罪判決となりました。

 日本におけるオリンパス事件の裁判で、最初の(そしてたぶん最後の)実刑判決となります。

 日本におけるオリンパス事件では、2013年7月に菊川社長(当時)らオリンパス幹部3名に執行猶予つきの有罪判決が、法人としてのオリンパスに7億円の罰金が言い渡され、それぞれ確定しています。

 1980年代から延々と損失隠しを続けていたオリンパスで、罪に問われたのがこの3名だけで、あとは(時効の壁もありましたが)すべて逃げ切ってしまいました。

 さらにオリンパスの会社ぐるみの事件ではなかったとするために、外部の「指南役」が損失隠しを主導したというかなり無理のあるシナリオが用意されたのですが、肝心の「指南役」とされた中川氏は2014年12月の判決で「幇助」だったと認定されました(中川氏は控訴)。

 本日の判決でも、同じく「指南役」とされた横尾氏ら3名は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)ではやはり「幇助」だったと認定されています。

 つまりオリンパス事件とは、金融商品取引法違反では(これがオリンパス事件のすべてというのも無理がありますが)オリンパスあるいは菊川氏らあるいは起訴されなかったオリンパスの誰かが主導した犯罪だったことが、あとから認定されたことになります。

 

 まあ菊川氏らと法人としてのオリンパスの判決は確定しており、オリンパスも上場が維持されたままなので「ちょっとおかしかったかもしれないね」で済んでしまいます。

 それでは横尾氏ら2名は、なぜ実刑判決となったのでしょう。それは横尾氏ら2名は、金融商品取引法違反のほかに詐欺罪でも起訴されていたからです。

 横尾氏ら2名は金融商品取引法違反で起訴された翌月の2012年3月に、オリンパスに700億円もの架空ののれん代を計上させた国内企業3社の株式を、(たぶん)同価格で群馬県群栄化学工業にも販売しており、これが3億4800万円を同社からだまし取った詐欺事件であると追起訴されていました。

 横尾氏ら2名は、この詐欺事件で実刑判決となったのですが、よく考えると大変に奇妙です。群栄化学工業に販売した株式が、実際の価値よりも3億4800万円「高かった」ことが詐欺行為に当たるなら、700億円も「高かった」オリンパスへの販売は「もっと」詐欺行為に当たり、それを購入したオリンパスの責任も重大となりますが、これらは一切問題とされていません。

 つまり起訴当時、横尾氏ら3名が取り調べで頑として否認していたため、捜査当局が「オリンパスに国内3社の株式を実際の価値よりも700億円も高く販売するために、他の上場会社(群栄化学工業)に同じように3億4800万円高く販売するという詐欺的行為を行い、その700億円をオリンパスが架空ののれん代に計上するように積極的に働きかけ有価証券報告書の虚偽記載を主導した」という奇怪なシナリオをつくり上げたことになります。

 本日の判決では、肝心の有価証券報告書の虚偽記載は「幇助」であると認定されたものの、本来はここを有罪とするために持ち出した群栄化学工業に対する「詐欺事件」で実刑判決が出てしまったことになります。

 横尾氏ら3名は否認していたため3年近くも拘留され、さらに2013年6月には組織的な犯罪による不正収益の規制等に関する法律違反でも追起訴され、挙句の果てに実刑判決となってしまいました。

 よく事件の取り調べで検事から「早く認めないと絶対に保釈させないで実刑にするぞ」と脅されるという話を聞くのですが、まさにその通りになってしまったことになります。

 オリンパス事件の単行本にも、本日の判決要旨をよく読んで取り入れることにします。