フォルクスワーゲンの不正をどう考える?

 フォルクスワーゲン(以下、VW)がディーゼル車の排ガス規制を潜り抜けるために不正なソフトを搭載していた問題は、世界中で販売された最大1100万台が対象となる会社ぐるみで大掛かりで悪質な不正であったことが明らかになりつつあります。

 最新のニュースではVWのヴィンターコルン元CEO(9月23日に辞任)に対しドイツの地元検察が捜査に乗り出したようで、問題発覚となった米国だけでなく世界中で(最大の販売先である中国を含む)大掛かりなリコール・刑事事件・巨額罰金・集団訴訟の嵐となるはずです。

 直感的にはVWはこのまま現在の体制を維持できず、何かしらの組織再編になると考えます。またユーロ圏で独り勝ち状態だったドイツ経済にとっても大きな打撃となるはずで、単なる経済問題をこえて世界的な政治問題にまで発展する可能性もあります。

 つまりここにきて企業倫理がどうのとか、ドイツ式のコンプライアンス体制が機能しなかったなどと議論するより、オールジャパンとしてこの政治問題に(経済問題ではなく政治問題です)どのように参画していくかを考えるべきです。

 自動車産業は日本に残された数少ない競争力のある業種で、VWの不正車が間違いなく日本の道路にも排気ガスを大量に撒き散らしているため、官民とも黙って見ているという選択肢は絶対にありません。

 またVWをはじめとするドイツ企業は経営を監視する監査役会の権限が強大で、日本の金融庁が標榜する「コンプライアンス強化のお手本」のはずです。しかし体制だけ整えても不正は起こるときは起こるものなので、あまりルールの厳格化に拘らないことです。

 ただ最近の東芝のような日本企業の不正の大半は、カネにまつわるもので人命を危うくするものではありません。ところがVWは(やや大げさですが)排気ガスを不正に撒き散らして人命にも関わる問題でもあります。

 つまり今回のVWの不正は、カネにまつわる東芝など日本企業の不正とは全く違い、昨年ノバルティスが臨床データをねつ造して日本人の人命を危うくして巨額利益(1兆円超?)を上げた不正(なぜか不正という表現は使われていませんが)に近いものです。

 

 このノバルティスに対しては一部業務の15日間の営業停止だけという冗談のような行政処分で済ませてしまったのですが、こんな「舐められたまま」で済ませてはいけません。2014年6月13日付け「ノバルティス・パソナ・渡辺喜美」にも書いてあります。

 話をVWに戻します。VWとは1937年にヒトラーが提唱した国民車構想をうけフェルディナント・ポルシェ博士らが設立した国策会社が起源ですが、当時は収容所捕虜や周辺国の労働者を徴用して戦闘車両を製造していました。実際の自動車製造は戦後にイギリス軍が接収してからですが、現在の株主構成はポルシェ創業家が50.7%、地元のニーダーザクセン州が20%、カタール投資庁が17%となっています。

 またVWとはグループ全体で製造・販売台数がともに1000万をこえ、トヨタ自動車と世界のトップを争っています。つまりトヨタ自動車にとっては世界最大・最強の自動車メーカーの座が自然に転がり込んでくることになりますが、それはそれで世界から足を引っ張られる恐れもあり注意が必要です。

 今回の騒動発覚後、VWの株価は約4割下落して直近(9月28日現在)の時価総額が494億ユーロ(6.6兆円)なっており、トヨタ自動車時価総額は本日(9月29日)の急落後でも22.9兆円あるため、時価総額だけ見ればトヨタ自動車VWを傘下に入れることも可能です。しかしVWの現在の株主構成では現実的ではなく、また意味も全くありません。

 VWに対しては無条件リコールとか(やや無理筋でも)巨額罰金を課すなどの対処療法しかなさそうですが、VWは米国企業でも(日本にシンパの多い)中国の企業でもないため遠慮する必要はありません。

 そう考えてくるとやっぱりルノーに行きつきます。ルノー時価総額日産自動車の支配権付きにもかかわらず直近で184億ユーロ(2.4兆円)しかなく、中国経済の減速や今回のVWの不正で欧州自動車全体がもっと売り込まれることも考えられるため、今度こそ官民をあげてでも日産自動車を取り戻す大きなチャンスが到来したと考えます。

 2014年9月5日付け「そろそろ日産自動車を取り返そうではないか」と2015年4月10日付け「ここで一気に日産自動車を取り返してしまおう」に方法論を書いてあります。

 民間企業とはいえ日産産自動車がルノーに吸い上げられている各種ベネフィットを日本に取り戻すだけでも、格好の景気対策になるはずです。本日の記事は起承転結にやや無理があるかもしれませんが、やはりいつも考えているところに行きついてしまいました。