出てきた日銀の追加緩和期待について

 本日(10月1日)の日経平均は334円高の17722円(終値、以下同じ)となり、9月29日の16930円からたった2営業日で792円(4.6%)もの上昇となりました。

 本日早朝に発表された日銀短観(9月調査)は、大企業製造業の業況判断DIが前回(6月)調査から3ポイント悪化のプラス12、大企業非製造業のDIは2ポイント改善のプラス25と「可もなし不可もなし」の結果となりましたが、株式市場にそれほどのインパクトがあったとは思えません。

 それより前回(6月)調査時点では中国経済への不安がほとんどなく(上海総合指数の高値は6月12日の5166ポイント)、そこから情勢が激変しているはずなので、最近の日銀短観の精度はかなり落ちていると言わざるを得ません。

 この2日間の株価上昇は、岩田一政・元日銀副総裁の発言などから日銀の追加緩和期待が出てきたからのようです。

 ここで注意しなければならないことは、岩田一政氏も黒田総裁や岩田規久男副総裁と同じで「とにかく物価を2%上昇させることが日銀の使命」というややピントの外れた目標に囚われたままで、黒田総裁や岩田(規)副総裁の物価上昇見通しが甘い=ここで追加緩和を行わないと2%の物価上昇目標が達成できないと考えているところが違うだけです。

 つまりこの期に及んでもまだ2%の物価上昇目標達成のためには追加緩和が必要と言っているだけで、そうなったら日本経済はどうなるのかとか、国民の生活はどうなるのかなどはほとんど気にしていません。

 それでも日経平均はかなり上昇しました。

 ここが重要なところで、追加緩和あるいはその期待感だけでも日経平均はまだまだ上昇することが改めて確認できたことになります。今後の(日経平均に限らず世界の)株式市場を考えるとき、基本的にはリーマンショック以降の金融緩和=通貨安=株高、あるいは金融緩和=景気が回復しなくても株高、つまり景気低迷=株高といった公式が、まだまだ機能していることになります。

 これが機能しなくなるタイミングの見極めが今後は大変に重要となりますが、これは世界の株式市場をよく見て微妙な変化を嗅ぎ取ることが唯一の方法となります。決して頭で考えたり、頭でしか考えないエコノミストや評論家の意見を鵜呑みにしてはいけません。

 話を戻しますが岩田(一)氏の考える追加緩和のメニューとは、現在年間80兆円の日銀保有国債の増加目標と、年間3兆円のETFと900億円のREIT買入れ枠をそれぞれ拡大するとともに、地方債や財投機関債なども買い入れ対象に加える「追加量的緩和」が中心となっています。

 また日銀当座預金への付利を引き下げるとか、場合によってはマイナス金利の導入も考えているようで、これは短期金利政策金利)を一層引き下げる伝統的な「追加金融緩和」となります。

 金融緩和と量的緩和は同じものではなく、短期金利政策金利)を引き下げるとともに短期金融市場に潤沢な資金を供給して、銀行が貸出しなどで長期資金を積極的に市場に供給して景気を刺激することが伝統的な金融緩和となります。

 これに対して日銀が直接的に長期国債を大量に買い入れて資金を市場に供給する政策が量的緩和です。ここで日銀は2013年4月の量的緩和導入以来ずっと2%の物価上昇目標実現のためと説明しているので大変に誤解を招くのですが、量的緩和とは長期金利を引き下げる効果しかなく、その結果10年国債利回りは0.3%程度まで低下しています。

 現在の日銀の政策金利短期金利)は0.0~0.1%で、その上限金利が適用されている日銀当座預金への付利が0.1%なので、10年国債利回りとの金利差が0.2%しかありません。しかしこの金利差こそ経済活動に対する重要なインセンティブのはずです。

 つまり日本経済に投資して10年の期間リスクを取ったとしても(クレジットリスクは別ですがここでは無視します)そのリターンは年間0.2%しかありません。これでは日本経済に投資をする意味がなく、銀行貸出しも国内投資も低迷したままで、ましてや海外から日本への投資が増えるはずがなく、長期間にわたる日本経済低迷の根本的原因となります。

 岩田(一)氏の追加緩和メニューでは、日銀当座預金への付利引き下げでこの金利差を少しでも拡大させるところだけは辛うじて評価できますが(それでも技術的には結構難しい)、依然として追加量的緩和が中心で長期金利をさらに低下させ日本経済をますます低迷させるものでしかありません。

 そして(仮に)追加量的緩和が強行されれば、ますます低迷する日本経済と上昇する株式市場との矛盾が「どこかで臨界点」に達することになりますが、どうやらそのタイミングはまだ少し先のようです。

 紙面の関係でかなり「はしょった」解説になっているため、来週月曜日(10月5日)配信の有料メルマガ「闇株新聞 プレミアム」で徹底的に解説します。よろしかったら読んでみてください。