大筋合意したTPPは国益に叶うのか?

 環太平洋パートナーシップ協定(以下、TPP)交渉に参加する日米など12ヶ国は、昨日(10月5日)に大筋合意に達したと大きく報道されています。

 この12ヶ国とは、日本、(太平洋を反時計回りに)ベトナム、マレーシア、シンガポールブルネイ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ペルー、メキシコ、米国、カナダで、そのGDP合計が3100兆円と全世界の36%をこえる世界最大の自由貿易圏が誕生すると喧噪されています。

 ただ欧州の地域型統合体であるEUと比べても、何となく太平洋の周りにあるというだけで身近でもない国を寄せ集めただけの「さあ、これから一致団結していこう!」とは誰も考えない違和感だけあるものです。

 それもそのはずでTPPとは、もともと2006年に発効したシンガポール、チリ、ニュージーランドブルネイの4ヶ国FTA自由貿易協定)だったところへ、2010年3月に大国の米国がオーストラリアなどと共に割り込んだため各国の思惑が大変に複雑化し、結局そこから大筋合意まで5年半もかかってしまいました。

 日本は2013年7月から交渉に加わったのですが、そもそも2010年当時は与党だった民主党がTPP参加に積極的で、野党だった自民党は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」と主張していたはずです。確か2012年末の衆議院選挙でも「交渉参加反対」を公約に掲げていたはずです。

 それが安倍政権の発足直後に明確な説明なしに突然方向転換してしまい、2013年7月の交渉参加となりました。それでも「コメなど重要5項目の死守」と主張していたはずですが、今回の大筋合意内容を見ても死守していたようには見えません。

 

 それでは本誌はTPPに賛成なのか、反対なのか?ですが、無条件賛成だった安保関連法案ほど明確な意見がありません。日本にとって総合的にプラスなのかマイナスなのかが良くわからないからですが、直感的には「プラスではない」いや「プラスのはずがない」と考えます。

 だいたい参加各国が(というより米国が)ある程度満足して合意した交渉とは、多国間でも2国間でも日本にとってプラスであるはずがないことは、過去の通商交渉など長い外交史から「断言」できるからです。

 とくに最近の米国では、1年以上も任期を残すオバマ大統領が内政では議会に全く相手にされず、辛うじて外交面で実績を残そうとするもののイラン核合意やシリア問題など迷走が続いており、このTPP交渉も何とか合意して自らの実績に加えたいと焦るオバマ大統領に乗じてあらゆる業界団体が「これでもか」と無理難題を押しつけたものにしか見えません。

 その米国でも野党共和党が支配する議会だけでなく、米国民にも「オバマの安直な人気取り」と批判されているようで、少なくともオバマ大統領任期中には議会の批准は不可能で、新大統領によってはそのまま雲散霧消してしまう可能性もあります。

 日本に話を戻しますが、報道の中心である関税撤廃だけを見ても、確かに関税が撤廃されることは少なくとも国民生活にはプラスですが、その対極にある国内の生産業者(特に農業)に与えるマイナスをすべて勘案すると、とても報道されている合意内容だけでは全貌が把握できません。

 ましてや薬品の特許保護期間、知的財産権、環境保護、投資・金融、さらにはISD条項(なぜか報道がほとんどない)などに日本の国益が反映されていることはまず考えられず、やはり何で日本までこんなに焦って米国の(一部ニュージーランドやメキシコの)ゴリ押しに大筋合意してしまったのか?との印象は残ります。

 まあややこじつけ的にプラス面を探せば、先日成立した安保関連法案とあわせて中国に「ある程度のプレッシャー」と、何かと反日の韓国経済界に「それなりのプレッシャー」を与えることができる(かもしれない)ことくらいです。

 一夜明けた本日(10月6日)付け日経新聞の社説では(本誌は日刊紙では日経新聞日刊ゲンダイしか読んでいません)、「TPPテコに世界経済の活性化を」と勇ましいのですが、読んでも空虚さだけが残ります。

 官邸の目もあるので反対はできないまでも、せめて経済問題にはもう少し国民目線に立ち、また何よりも日本の国益から見た「生きた社説」を書いて欲しいと感じました。