出てきた日銀の追加緩和期待について  その2

 10月2日付け「同題記事」の続編ですが、日銀は10月6日~7日に開催された政策決定会合で現行の量的緩和の維持を8:1の賛成多数で決定しました。一部で期待されていた追加量的緩和を見送ったわけですが市場には依然として追加量的緩和期待が残り、年内にあと3回ある政策決定会合(10月30日、11月18~19日、12月17~18日)が注目されることになります。

 最近の世界情勢では金融政策に限らず「どうするべきか?」と「どうなるか?」を別個に判断する必要があり、例えばFRBは「利上げするべきではない」と考えるものの「やっぱり年内(12月)には利上げする」という予想になります。

 そう考えると日銀の追加量的緩和も「絶対に踏み切るべきではない」さらには「縮小してしまうべき」と考えますが、実際に「どうなるか?」は少々複雑で解説が必要です。

 現行の量的緩和とは、日銀が最長40年まですべての年限の国債を保有残高が年間80兆円増加するように買い入れるものです。つまり償還された日銀保有の国債も再投資されることになります。

 日銀は安倍政権発足後まもなく、2013年4月4日に平均残存7年程度の国債を年間50兆円増加させる「異次元」量的緩和に踏み切り、2014年10月31日に平均残存7~10年の国債を年間80兆円増加させる追加量的緩和に踏み切りました。

 ちなみにこの2014年10月31日の追加量的緩和は、金融界・産業界の審議委員各2名が反対に回り5:4の僅差で決定されたものですが、政策決定会合では常に総裁・副総裁(2名)官僚・学者枠(計2名)が与党で過半数が確保されており、要するに全く形式的なものとなります。

 野村證券出身の木内委員だけが現在まで一貫して日銀の国債保有増加額を年間45兆円に留めるよう提案して毎回否決されていますが、そもそも国債残存額は年間25~30兆円の増加でしかないため、本誌は木内案でも「多すぎる」と考えています。

 ここで現在の日銀は完全に旧大蔵省の傘下であり、その量的緩和の「真の目的」とは「消費税を無事に10%にする」ことでしかなく、そのために目に見える株式市場の好調を維持するための量的緩和ということになります。

 そして昨年末の安倍首相の抵抗が無ければ、今月(2015年10月)には消費税は無事に10%になっていたはずです。だからダメ押しのために(株価を上昇させるために)2014年10月に予想外の追加量的緩和に踏み切り「側面支援」していたことになります。

 つまり消費税が予定通りに10%に引き上げられれば、もう株価を上昇させる積極的な理由もなくなるため、現行の量的緩和も「適当なところで適当な理由をつけて」打ち切ってしまうはずだったと考えます。

 ところが安倍首相の予想外の抵抗に遭い、衆議院の解散・総選挙を経て10%への消費増税実施が2017年4月まで1年半も延期されてしまい、それだけ量的緩和の期間も(しかも追加量的緩和してしまったペースで)少なくとも1年半~2年程度は延期せざるを得なくなってしまいました。

 2017年4月の消費増税には景気条項がなく、また安倍首相ももう1回抵抗するだけの「勢い」は今回の安保関連法案で削がれてしまったため、旧大蔵省とすれば2017年4月まで粛々と待っているだけで満願成就となります。つまりわざわざさらに追加量的緩和で「側面支援」する必要もないことになります。

 もともと2017年4月の消費増税実施は逃れられないと考えられていますが、2012年に当時与党の民主党案に当時野党の自民・公明両党までが賛成に回り成立してしまった消費増税関連法案を修正して中止にすればよいだけですが、残念ながらこれからの安倍内閣にはその「勢い」がありません。

 つまり旧大蔵省傘下の日銀は、現行の追加された量的緩和を想定より1年半~2年も長く継続しなければならないわけで、いくらなんでもさらに追加量的緩和に踏み切ることは難しいと考えているはずです。

 まあ日本株がさらに下落すれば(日本経済がさらに低迷すればではありません)、安倍首相がもう1回抵抗しないように「予防的に追加量的緩和」に踏み切る可能性もないわけではありませんが、その時は国債(それも長期国債)の日銀保有をさらに年間20兆円も増加させるのではなく、年間3兆円のETFの年間増加枠を例えば5兆円にすれば、たった2兆円の増加で株式市場に(日本経済にではありません)目覚ましい影響が期待できるはずです。

 これらが、日銀は国債保有をもっと増加させる追加量的緩和に「踏み切る必要が無い」と考える理由です。