もう少し沖縄について真剣に考えようではないか

 意味するところを誤解される可能性がありますが、もう少し沖縄の政治的・地勢的・軍事的重要性をしっかりと認識して不測の事態に備えるべきという意味です。

 沖縄県の翁長雄志知事は本日(10月13日)午前、仲井真前知事が承認していた名護市辺野古沖の埋め立て工事の承認を取消したと沖縄防衛局に通知しました。これで埋め立て工事ができなくなります。

 辺野古沖の埋め立てとは、米軍普天間基地の移設先として辺野古およびその沖合の基地建設のためであり、1995年から紆余曲折を続けた普天間基地移転問題が事実上ストップしてしまうことを意味します。

 翁長知事は承認取り消しの理由として、普天間基地の移設先が名護市辺野古である必要性が乏しいこと、沖縄に集中する米軍基地負担が固定化すること、周辺の自然環境に影響が出ることなどを挙げています。

 これに対し政府は、公有水面埋立法(埋め立て承認は国の強い関与を認める法定受託事務とされているから)を所管する国土交通大臣に、行政不服審査法に基づく承認取り消しの無効決定および執行停止の仮処分を申し立てるはずです。

 これらの申し立てを判断する国土交通大臣は内閣の一員であり政府寄りの判断が出るはずですが、国土交通大臣公明党のポストであるため予断は許さず、最終的に法廷闘争となると「そもそも米軍駐留の根拠となる日米地位協定は合憲か?」などと議論していると10年単位の時間がかかってしまいます。

 つまり翁長知事の「壮大な時間稼ぎ」となるわけですが、ここで少し冷静になって考えてみましょう。

 ここ1年ほどの世界情勢は間違いなく政治的・軍事的緊張が高まっています。今週月曜日(10月12日)配信の有料メルマガ「闇株新聞 プレミアム」でも、来年にかけて世界の最重要課題は経済・金融ではなく政治・外交であり、株式などの市場も世界の政治・外交情勢に大きく影響されるようになると書き始めたところです。

 こうなってしまった最大の理由は、まだ任期を1年以上残しているオバマ大統領の外交が完全に迷走しているからですが、少なくとも日本にとっては日米安保条約が最大の脅威となる中国に対する「抑止力」になっていることは間違いなく、先日成立した安保関連法案はその強化に寄与することも間違いありません。

 辛うじてこの世界の政治的・軍事的緊張に対する「最小限の備え」が間に合ったと安堵すべきですが、そのタイミングでの承認取り消しとなります。いくら日米安保条約が抑止力になり先日の安保関連法案で強化されたと思っても、基地がなくなり肝心の米軍がいなくなれば抑止力どころではありません。

 そうでなくても歴代内閣(具体的には福田康夫内閣と、その後の民主党各内閣)の迷走で、最も頼りになる米軍海兵隊が9000人もグアムに移転することになってしまいました。対中国(だけではありませんが)で考えるとすでにかなり戦力ダウンになっており、今回はそれに追い打ちとなります。

 翁長知事の真意がどこにあるかはともかくとして、結果的に中国(だけではありませんが)を一方的に利することになります。

 9月28日付け「これだけは言っておきたい安保関連法案 その2」で、翁長知事と中国との「異常な距離の近さ」に少し触れたところ、「自分の故郷(沖縄)の利益を最大限にするために仕事をしているのだから失礼だ」とのコメントをいただいていました。

 紙面の関係でお答えしていませんでしたが、知事が地元の利益を最大限にすることは当然でも、日本以外の国の利益(とくに日本にとって最大の脅威である国の利益)に結果的にでもなってしまう選択肢を選ぶことは日本の政治家として控えるべきで、私欲がなくてもその国(中国です)との関係を取り沙汰されてもやむを得ません。これは決して推測で書いているわけではありません。

 琉球王国(沖縄)はもともと独立国で15世紀には明の冊封下(保護下)にありましたが、1609年に薩摩藩が侵攻し実質支配していました。明治新政府は1872年に琉球藩を設置し、琉球国王尚泰琉球藩主および華族に列しました。

 しかし明治政府琉球藩がその後も従わなかったため、1879年に官僚・警官・兵士など600名を派遣して沖縄藩の廃止、首里城の明け渡し、沖縄県の設置、県令(今の知事)・鍋島直彬の派遣などを断行しました。「琉球処分」と言いますが、ここで初めて沖縄が正式に日本領になりました。

 つまり沖縄は決して日本古来の領土ではなく、いろいろな意味で表題の「もう少し沖縄について真剣に考えようではないか」となります。