オリンパス事件の光と影  その18

 いつまでたっても奇怪なものが出てくるオリンパス事件の続報です。

 東京地検特捜部は10月23日、オリンパス損失隠しを指南していた米国在住の佐川肇氏を(東京で)在宅起訴したと発表しました。

  佐川氏はジャイラス買収に絡む損失隠しの直接的相手方となったアクシーズ・アメリカ代表であり、それがオリンパス事件の核心というなら間違いなくオリンパスを含めた全関係者のだれよりも深くかかわった当事者であり、ほぼ全体の構図を考案して実行した「主犯」ともいえる存在でした。

 事件発覚直後は第三者委員会東京地検特捜部の呼び出しにも頑(がん)として応ぜず、早々と米国の証券取引委員会(The Securities and Exchange Commission、以下SEC)およびFBIに積極的に協力して多数の情報提供(もちろんオリンパスにとって不利な情報です)を行っていたはずです。

 その見返りとして2014年9月5日にSECから、将来米国で証券業務に従事しないという米国の証券犯罪としては冗談のような軽い処分だけで無罪放免されていました。身柄も拘束されず罰金も一切請求されず、オリンパスから得た高額報酬でフロリダの高級リゾート地・ボカラトン(Boca Raton)で悠々自適の生活を送っていました。

 SECの決定文で佐川氏は被告(Respondent)とハッキリと特定されており、証券取引委員会の捜査における協力を鑑みての( based upon his cooperation in a Commission investigation)処分であるともハッキリと書かれています。

 完全なる司法取引です。米国当局が佐川氏の提供した情報でオリンパスを訴追する可能性は十分残りますが、佐川氏はこれで完全に解放されています。

 一方で、大変不思議なことに日本では完全に見逃されたシンガポール・ルートで、預金担保で融資を受けていたにもかかわらず預金残高だけを記載した残高証明書を交付していたとされるチャン・ミン・フォン氏は2012年12月に米国へ入国した際にFBIに逮捕され、長期間拘留ののちに禁固5年・巨額罰金(金額は不明ですがオリンパスから得た報酬・1000万ドル全額のようです)の有罪が確定しており、どこまでいっても不公平感が残る結果となりました。

 さてそんな佐川氏が、何でのこのこと日本に帰ってきて証券取引等監視委員会東京地検特捜部に出頭し、何で告発を受けた特捜部も在宅起訴で済ませてしまったのでしょう?報道では東京地検特捜部はこれで捜査終了と言っています。

 あくまでも本誌の推測ですが、早く終了させたい東京地検特捜部が佐川氏に「逃げ回っていたら死ぬまで帰国できませんよ。海外逃亡は時効にカウントされないので帰国次第逮捕しますよ。でもここで帰国したら逮捕せずに在宅起訴にしてあげますよ。裁判は1回で終わり、どうせ執行猶予で追徴金も請求しませんから痛くも痒くもありませんよ」とでも囁いたような気がします。

 やはりオリンパス事件の核心とされたジャイラス買収に絡む損失隠しの「主犯」でありながら、海外逃亡中で逮捕も取り調べも全くできていないでは格好がつかず、いつまでたっても継続案件になってしまうので東京地検特捜部が急いだのかもしれません。

 佐川氏はどこまで行っても、オリンパスから1000万ポンド(17億円)の高額退職金をせしめたウッドフォードと並ぶ、オリンパス事件最大の「勝ち組」となります。

 ところで報道では佐川氏の住所が「東京都新宿区」となっており、そこで在宅起訴されたわけですが、米国在住の佐川氏には日本の住所がないはずです。

 これはどうも佐川氏が保有しているマンションで、オリンパスに見つかって損害賠償請求訴訟を起こされ差し押さえされている物件のようです。ところがこれまでの佐川氏はこの裁判に出席できず、このままだと物件はオリンパスに奪われてしまうため裁判に出席して戦うつもりなのかもしれません。オリンパスから高額報酬を得ているので、マンションの1つくらい「お返し」するべきだと思うのですがね。

 今回は報道から時間がなかったため表に出ていない全貌をお知らせすることができませんが、完成が近い単行本では余すところなく取り上げます。

 「単行本はいつになったら完成するのだ?」と言われていますが、書き直しを重ねて大変に充実した内容になってきていますので、今しばらくお待ちください。扶桑社の編集の皆様、お待たせして大変に申し訳ございません。