ひとまず安泰なのか? 日産自動車の命運

 日産自動車筆頭株主ルノーは12月11日、フランス政府との間で日産自動車の経営にフランス政府が介入しないことで合意したと発表しました。

 ルノー日産自動車の議決権の43.4%を保有し、フランス政府はそのルノーの議決権の19.7%を保有していますが「フロランジュ法」の適用により2016年4月から約28%の議決権を保有することになります。

 「フロランジュ法」とは2年以上保有する株主の議決権が2倍になる法律ですが、フランス政府はルノーの2015年4月の株主総会前に議決権の15%から密かに19.7%まで買い増し、その株主総会で同法の適用を免れる会社提案を拒否してしまいました。

 そしてフランス政府はルノー日産自動車に対し、フランス政府が強い影響力を持つ形での経営統合を要請していました。要するに日産自動車が経営統合(合併)で完全にルノーに飲み込まれ、日本の会社でなくなるだけでなく影も形もなくなってしまうことになります。

 現在の資本関係や、日産自動車ルノーのCEOをカルロス・ゴーン氏が兼任していることや、日産自動社の取締役会は日本人が過半数を占めているもののルノーやゴーン氏の意向に全く逆らえない(逆らう意思がない、逆らわないことが取締役になる条件)などから、日産自動車が消滅してしまう事態を避けることはほぼ絶望的に思えていました。

 ところが12月11日に開催されたルノーの取締役会で、フランス政府の代表を含む取締役会が全員一致で「フランス政府は日産自動車の経営に介入しない」というゴーンCEOの主張を支持したと報道されています。

 具体的には、日産自動車経営判断に対して(フランス政府が最大の株主で経営に対する影響力を持つ)ルノーによる不当な干渉を受けた場合、ルノーへの出資を引き揚げる権利を日産自動車に付与するようです。

 日産自動車ルノーの議決権の15%を保有していますが議決権がありません。ルノー日産自動車の議決権の43.4%を保有しているからですが(フランスの会社法)、日産自動車が保有するルノーの議決権を25%まで引き上げればルノー日産自動車に対する議決権が消滅してしまいます(日本の会社法第308条)。

 今まで日産自動車は自由にルノーの株を取得することも売却することもできなかったはずですが(これはルノー日産自動車の取り決め)、これを取り払うことになるはずです。

 一見、日産自動車にとって「最良の」決定であるように見えますが、腑に落ちないところがあります。

 まずそもそもフランス政府がフロランジュ法を制定し、ルノーに対しては本年の株主総会前に密かに買い増してまで同法を適用させた大きな理由には、ルノーを支配すれば(ルノーよりはるかに規模も収益性も優れる)日産自動車がほぼ自動的にセットになっていることがあったはずです。

 そもそも1999年に経営危機を引き起こした日産自動車の「無能な」経営陣が、保身のためにわざわざルノーにそこまでの議決権を売り渡して傘下に入れてしまったからですが、その無責任のツケがここに出てきているわけです。

 しかし今回の合意は(もし報道の通りだとすれば)、フランス政府が絶対的に有利な状況でありながら「わざわざ」日産自動車に、そこから抜け出せる条項を与えたことになり、到底ありえない決定です。

 ちょうど有料メルマガ「闇株新聞 プレミアム」に長いシリーズで書いていますが、フランスとは歴史的にも現在でも大変に厚かましい国で、ある意味大変に交渉力に長けた国です。

 そのフランスがこんな「おめでたい」ことをするはずがありません。

 今回の合意には、何か大変に重要な事実が伏せられていると感じます。ゴーンCEOはフランス政府の「覚えをめでたくする」動機はあっても、日産自動車のためにフランス政府の介入を排除する動機は希薄であるはずだからです。

 ゴーン氏に対するフランス政府の評価は必ずしも高くなく、ゴーン氏は更迭を避けるために日産自動車と経営統合(合併)するところではフランス政府と妥協すると考えた方が、はるかに自然です。別に強引でなくても現在の資本関係なら簡単にできてしまうからです。

 もう少し冷静になって考えなければならないようです。