ドイツバンクの経営危機とCoCo債とは?

 本日(2月15日)配信した有料メルマガ「闇株新聞 プレミアム」の記事の一部を要約・修正したものです。大変に重要な内容と考えるため闇株新聞にも掲載いたします。有料メルマガの読者の皆様にはどうかご了承いただきたいと存じます。

 以下、本文です。

 ドイツ最大の民間銀行であるドイツバンクは、1月28日に2015年通年の損益が68億ユーロ(8600億円)の巨額赤字になったと発表しました。かねてよりドイツバンクは財務基盤の脆弱さが指摘されており、昨年夏にはシニア格付け(S&P)がAからBBBプラスに2段階引き下げられていました。

 ドイツバンクの株価も昨年夏の32ユーロから急落して2月9日には13.23ユーロとなり、リーマンショック時や2度のギリシャショック時の株価も下回ってしまいました。

 一時は発行債券の利払いまで懸念されていましたが、先週末(2月12日)には30億ユーロと20億ドルの(計6000億円)の債券買い戻しを発表し、同日の株価も15.3ユーロまで回復しましたが、状況はあまり改善していないようです。

 ドイツバンクは以前から脆弱な自己資本を補強するため46億ユーロ(5800億円)ものCoCo債(偶発転換社債)を発行しています。CoCo債とはドイツ銀行の資本勘定が一定基準を下回ると、予め決められた転換価格で普通株に強制的に転換されるか、もしくは直接的に元本の一部が削減されるもので、自己資本に算入されます。

 要するにドイツバンクの信用状況が危うくなったときにCoCo債の一部あるいは全部が自動的にドイツバンクの資本に振り替えられる(召し上げられる)仕組みで、当然にCoCo債の投資家は大きな損失を蒙ることになります。ドイツバンクのCoCo債の気配はすでに発行価格の7割程度まで値下がりしていますが、流動性も消滅しているためそれで売却できるわけでもなさそうで、先週末に発表されたドイツバンクの債券買い戻しには当然にCoCo債は含まれていません。

 本誌はCoCo債について一度だけ2014年10月1日付け「こういう投資信託にご用心!」で取り上げ、同時に強い警告を発しておきました。投資家が背負わされるリスクに比べて得られるリターン(利回りが高いなど)が全く釣り合っていないシロモノだからです。

 CoCo債は自己資本に算入されるため、ドイツバンクほどでなくても資本基盤が脆弱な欧州の銀行が軒並み発行していたようで、総発行残高が1020億ドル(1兆1400億円)もあるそうです。

 さてドイツバンクはなぜこういう事態になってしまったのでしょう。

 VWやロシア・ギリシャへの融資残高が大きいとか、資産規模が大きいため2014年6月からのマイナス金利で(日銀のような誇大発表したマイナス金利ではなく、短期金融市場全体に適用されるホンモノのマイナス金利です)減収幅が大きいとか、LIBOR不正操作やMBS不正販売などで米国や英国の当局に合計で数千億円規模の罰金・和解金を支払う必要があるなどの理由が挙げられています。

 しかし何と言っても最も深刻な問題はドイツバンクデリバティブ取引残高(名目額面)が「天文学的」に積み上がっている(らしい)ことです。

 一説にはそのデリバティブ取引残高がドイツGDPの20倍以上の75兆ドル(8400兆円!)もあると言われています。デリバティブ取引残高といってもその大半は金利スワップのはずで、名目額面が巨大でもそれほど心配する必要はないはずですが、実際の中身は外部からは窺い知れず不安が拡大しています。

 これはリーマンショック直前の2008年9月にたった1日で850億ドルもの追加担保を求められて「あっと」いう間に破綻した(一時国有化された)米国保険大手のAIGを連想させますが、そのAIGでも積み上がったデリバティブ取引残高は現在のドイツバンクより1桁小さかったはずです。

 これが囁かれているドイツバンク危機の「正体」ですが、ドイツバンクほどではなくても欧州大手銀行のデリバティブ取引残高は「それなりに巨大」であり、これが現時点の世界経済に埋まっている「原爆級の地雷」であるはずです。

 今のところはすぐに世界がリーマンショック並みの金融危機に見舞われる可能性は低いと考えますが、リーマンショックサブプライムローンが問題視されてから1年以上経過して勃発したものでした。今回も仮に鎮静化しても、決して気を緩められない厄介な問題であり続けると感じます。