「異次元」量的緩和・追加量的緩和・マイナス金利導入の「真の目的」

 表題はもちろん黒田総裁就任後の一連の日銀金融政策であり、黒田氏は旧大蔵官僚であるため日銀の「真の目的」ではなく、旧大蔵省の「真の目的」となります。

 黒田日銀総裁の就任は2013年3月20日ですが、同年4月8日までが任期だった白川前総裁をわざわざ辞任させてまで「前倒し」したものでした。

 そして就任直後の2013年4月4日に、日銀の国債保有残高(短期国債を除く)を年間50兆円増加させるため、残存40年までの国債を万遍なく買い入れる「異次元」量的緩和に踏み切りました。これはそれまでの日銀金融政策を180度転換するもので、黒田総裁はそんな重大な変更を就任後2週間足らずで決めてしまったことになります。

 ちなみにその発表前日(4月3日)の日経平均終値)は12362円、円相場(NY終値)は1ドル=93.04円だったため確かに円安・株高効果はあり、2014年4月には旧大蔵省待望の消費増税(5%が8%に)となりました。

 さらに2014年10月31日に、日銀の国債保有残高の増加額を年間80兆円とする追加量的緩和に踏み切りましたが、これも市場ではほとんど予想されていなかった唐突なものでした。

 同じ2014年10月31日にGPIFが国内株と外貨資産の保有割合を大幅に拡大する「資産構成の変更」を発表しています。GPIFなどの公的資金がフライングで国内株と外貨資産を買い始めていたかどうかは詮索しませんが、発表前日(10月30日)の日経平均終値)は15658円、円相場(NY終値)は1ドル=109.20円だったため、まだ辛うじて追加量的緩和による円安・株高効果が残っていることになります。

 その結果、直近(2016年2月10日現在)の日銀は国債(短期国債を含む)を340兆円保有し、それを94兆円の日銀券と252兆円の日銀当座預金でファイナンスしています。日銀券は日銀の永久債務で自己資本に準じますが、当座預金は全く他人(銀行)のカネです。

 国債発行残高の年間純増額はせいぜい30~35兆円なので、それをはるかにこえる国債を日銀が買い続けると当然に国債利回り金利水準)が全般的に低下します。ところが日本は民間全体でみると負債より資産が圧倒的に大きいため、金利水準が低下して景気が良くなるわけではありません。民間から銀行を通じて日銀(旧大蔵省)に富が移転してしまうからです。

 それでも日銀が追加量的緩和に踏み切った理由は、当時は2015年10月に予定されていた消費再増税(8%が10%に)へのアシストだった以外に、銀行の余資(国民の預金のことです)をできるだけ日銀当座預金残高に吸い上げて日銀保有の国債をファイナンスさせるためと考えられます。

 つまり銀行に任せておけば余資(預金のことです)が必ず国債保有となるわけではないため、量的緩和・追加量的緩和で銀行の余資(預金)を間接的に国債に振り向けていることになります。

 そうは言っても銀行は日銀当座預金をいつでも取り崩すことができるので、必ずしもそうならないのでは?

 そこで2016年1月29日に新たに(また唐突に)マイナス金利が導入されました。ここで実際にマイナス金利が適用される日銀当座預金残高は当初10兆円、1年後でも10~30兆円(たぶん10兆円のまま)であり、これからもずっと210兆円ほどの日銀当座預金残高にプラス0.1%が支払われ続ける「談合型誇大発表」だったことは何度も書いたので繰り返しません。

 しかしそれでも市中の短期金利(残存年数が短い国債利回りを含む)はマイナスになってしまいます。

 そこで日銀は、すでに積み上がっている210兆円(これは2015年通年の平残です)の当座預金にプラス0.1%の金利を支払い続けて残高を繋ぎ止め、今後も日銀が国債を買い続けて銀行に支払う80兆円も市中のマイナス金利より有利なゼロ金利として大半を当座預金に積み上げさせることができます。

 つまり日銀の当座預金残高は今後も維持・拡大となり、日銀(旧大蔵省の傘下です)は今後も「安心して」国債を買い続けることができ、銀行の余資(国民の預金のことです)は今後も半永久的に国債に振り向けられることになります。

 これが黒田総裁就任後の、今ひとつ意味が良くわからない「異次元」量的緩和・追加量的緩和マイナス金利導入という3点セットの「真の目的」と考えます。