円安は封印されたのか?

 2月27日まで上海でG20(財務相中央銀行総裁会議)が開催されていました。普段のG20では、20ヶ国も集まって「実のある議論」が行われるはずがないため、本誌でも今まで取り上げたことはありませんでした。

 ところが今回は少し事情が違っていたようです。

 発表された共同声明は、まず世界経済については「経済見通しがさらに下方修正されるリスクが増している」と「最近の市場変動は世界経済の実体を反映していない」の2点がポイントとして挙げられています。

 後者の意味がやや不明確ですが、これは為替市場における「過度の変動」を指しているようです。

 経済・金融政策については「成長押し上げへ金融・財政・構造改革を総動員」「金融政策だけでは成長は困難。機動的な財政出動を実施」「通貨の競争的な切り下げを回避」「資本移動の監視を強化」と並びます。

 ここもポイントは明確で、参加国は「金融政策(金融緩和のことです)だけに頼るな」と「(金融緩和を強化することによる)通貨安政策をとるな」となります。

 これは帰国した黒田総裁が否定したにもかかわらず、明確に日本を、それも先日導入したマイナス金利政策を批判しているはずです。

 ECBも3月に追加緩和すると表明していますが、これも「ほどほどに」と念を押されたかもしれません。しかし当のデイセルブルム・ユーロ圏財務相会合議長は「日本については競争的な通貨引き下げの懸念が討議された」とわざわざ発言しており、しっかりと矛先を日本に振り向けています。

 最後の「資本移動の監視を強化」はもちろん中国の経済・金融市場に対するものですが、実は2月19日にすでに中国人民銀行副総裁が「過度の金融緩和は避ける」と発言しています。

 これはもちろん過度の金融緩和・人民元安・資本流出・上海株式安・中国経済混乱という負のスパイラルを断ち切るためで、実際に連休明けの2月15日には人民元基準値を1ドル=6.5118人民元と連休前の6.53ドル台半ばから人民元高に設定し、同時にオフショア市場で大量の人民元買い介入を行ったようです。

 しかし本日(2月29日)の基準値は1ドル=6.5452元と連休前より人民元安となってしまい、まだまだ人民元の売り圧力が大きいようです。しかし少なくとも方向性は正しく、G20の合意内容とも一致しています(注)。

(注)ところが本日夜になって中国人民銀行が預金準備率を0.5%引き下げたと発表しています。G20が終わった直後に堂々と引き下げてしまいました。

 また米国でも2月24日に、オバマ大統領が貿易相手国の為替操作を阻止する条項が織り込まれた関税関連法案に署名し、成立しています。

 つまりG20の議論だけでなく、世界的に通貨安政策あるいは通貨安につながる過度の金融緩和を封印しようとする動きが「はっきり」と出てきたようです。そしてその最大の対象国が他ならぬ日本のようです。

 ここで特に本年に入ってから円高が進み、たぶん本年の最強通貨であるはずの円が、なぜ批判あるいは監視の対象になっているのでしょう?

 これは本年に入ってから世界経済が一段と低迷して簡単に回復の糸口が見いだせなくなっているなかで、少なくとも米国とドル圏経済では金融緩和を終了してしまったため、ここからさらに過度の金融緩和で通貨安を演出し「抜け駆けする国」が出てくると困るからと考えます。

 ということは2012年末にスタートしたアベノミクスとは、量的緩和と円安を遠慮せずに好きなだけ続けられた「大変に恵まれた環境だった」ことになります。その恵まれた環境が3年以上も続いたにもかかわらず、足元の日本経済は大きく出遅れたままです。

 ここで円安を封印されてしまったのであれば、いよいよヘッジファンドが本格的な「円買い」を仕掛けてくる可能性まで出てきます。

 そんな心配が出てくるG20でした。