まだまだ目が離せないシャープ

 シャープの2016年3月期連結最終損益が2000億円規模の赤字(2015年3月期も2223億円の赤字)となり、延期されていた鴻海の傘下となる正式調印が3月31日に行われる見通しであると報道されています。

 シャープは2016年3月期の営業利益予想は100億円の黒字のままで(期初には800億円という冗談のような黒字予想だった)、経常利益、最終損益は予想すら発表しておらず、本日の2000億円の赤字報道にも「当社(シャープ)の発表にもとづくものではない」とIRしています。

 それよりシャープは2月25日に、4890億円の第三者割当増資を引き受ける鴻海の傘下に入ることを機関決定(取締役決議)しておきながら、その前日の2月24日になってから3500億円規模の「偶発債務」があると鴻海にそっとメールを送り、当然のように鴻海が2月29日に予定されていた正式調印を延期していました。

 今回到達した(とされる)再合意内容は、総額4890億円と発表されていた第三社割当増資(払い込み価格=118円)を1000億円減額し、主力のみずほ銀行三菱東京UFJ銀行が新たにシャープに3000億円の融資枠を設定し、さらに両行が保有する合計2000億円の優先株のうち1000億円を額面で買い取る合意を3年程度延期するなどのようです。

 これで明日(3月30日)にシャープと鴻海がそれぞれ取締役会で決議し、31日に正式調印となるようです。

 偶発債務については3月22日付け「シャープの偶発債務とは?」で、シャープは巨額赤字を垂れ流しながら同時に「粉飾に近い」決算を続けており、この3500億円のなかには「隠れ損失」や「不正会計」が少なからず含まれていると予想しました。

 巨額赤字を垂れ流しても経営陣の犯罪とはなりませんが、そこに「意識的に隠した損失」や「不正会計」などが含まれると経営陣が刑事責任を問われる恐れがあります。シャープは東芝のように「周囲が遠慮して犯罪にならないように気を使ってくれる」社会的に影響力のある企業でもありません。

 だからこれらの「偶発債務」は、監査法人にも、東京証券取引所にも、有価証券報告書を提出する金融庁(財務局)にも、産業革新機構にも、そしてずっと鴻海にも言い出せず、いよいよ正式合意となった2月24日になってから「恐る恐る」伝えて鴻海の反応を見るしかなかったはずです。

 この言い出せなかったなかに主力のみずほ銀行三菱東京UFJ銀行を入れていませんが、今回も3000億円の新たな融資枠設定や優先株の買い取り延期を、ほとんど抵抗せずに受け入れているように思えるところから、ある程度は認識(覚悟)していたはずと感じます。

 さすがに今回の鴻海は、その3500億円の「偶発債務」とやらを徹底的に調査したはずで、その結果が1000億円の減額であるなら、その最大損失を1000億円以内と見積もったことになります。

 つまり仮にシャープに「隠れ損失」や「不正会計」があったとしても、鴻海は今回の1000億円の減額で「見事に」表に出ることなく処理してしまったことになります。そして2016年3月期に在庫評価損など堂々と落とせるものは必要以上に落として、2000億円規模の損失を傘下に入れる前に計上させてしまうようです。

 産業革新機構だったら「大騒ぎ」されて最悪の事態になっていたかもしれません。

 しかしそれでも問題が残ります。第三者割当増資の減額は、鴻海は当初66%と決められたシャープの議決権を減らすはずがないため、払い込み価格を1株=94円程度に引き下げる必要があります(日経新聞は88円と書いていますが、これは優先株を計算に入れていないはずで94円が正しいと思います)。

 とはいっても本日(3月29日)の株価は130円なので、このままだと有利発行となり株主総会の承認がいります。また発表された時から気になっていたのですが、この第三者割当増資の払い込み日が6月28日~9月5日の間となっており、今回さらにエンドを1か月ほど延期するようです。

 この6月28日というのはシャープの定時株主総会終了後という意味のはずで、鴻海はシャープに1円も払い込まない段階で定時株主総会に承認させて取締役会の過半数を握ってしまうことになります。鴻海はシャープに1円も払い込まない段階ですでにシャープを支配下に入れることになり、そこからはどんな鴻海寄りの機関決定もできてしまうことになります。

 そのために1000億円の保証金を受け入れることになっており、今回もその保証金は支払われることになったようですが、取締役会の過半数を獲得することになっている鴻海がシャープにいくら保証金を払っても、実際には何の保全にもなっていません。

 どう考えてもまだまだ目が離せないシャープとなります。