日本の税収内訳と財政状況をもっと正確に理解しておくべき その3

 6月1日~2日付け「同題記事 その1~2」にたくさんのコメントやご質問をいただきました。個別にお答えすることはできませんが、説明不足だったポイントを改めて解説することにします。

 実は今回の消費増税再延期で一番の問題は、現在の「異次元」量的緩和を2019年10月の消費増税実施まで続けると、いくらなんでも問題が出てくることです。

 もともと「異次元」量的緩和とは消費税率を速やかに10%に引き上げるための環境づくりの側面があり、2014年10月の追加量的緩和も当時2015年10月に予定されていた消費増税(8%から10%)の環境づくりだったはずです。

 この追加量的緩和とは、日銀保有国債の純増額をそれまでの年間50兆円から80兆円まで引き上げたものですが、そこから消費増税実施が2回にわたり計4年間延期されることになるため、当時は短期決戦と考えられていたはずの現在の(追加された)量的緩和を長期間継続する必要が出てきてしまいました。

 もちろんこれは日本の財政状況の議論ではなく、発行された国債を日銀がどれだけ保有するかの議論でしかありません。しかし日銀がいつまでも国債を「異次元」に買い入れているなら、つい財政規律が緩んでしまう恐れもありますが、ここで強調したい問題はこれでもありません。

 日銀は5月31日現在で370兆円の国債を保有していますが、内訳は319兆円の長期国債(期間が長い国債ではなく短期国債を除く国債という意味)と51兆円の短期国債です。

 

 実は日銀保有国債を年間80兆円純増させる目標は、この長期国債だけなので、仮に短期国債の保有残高を一定とすると、今から3年半後の2019年11月末には599兆円の長期国債、短期国債を加えると650兆円の国債を保有することになります。

 3年半後の2019年11月末としたのは、2019年10月1日から消費増税を実施(予定)するとさっさと量的緩和をやめてしまうと仮定していますが、いくらなんでもそんな「あからさまな」こともできないので、もっと継続するため日銀の国債保有残高はもっと膨らむはずです。

 つまり控えめに見積もった日銀の国債保有残高でも、消費増税が予定通り2019年10月に実施されるとしてその直後に長期国債が599兆円、短期国債を含めると650兆円になるわけです。

 その時点の国債の総発行残高を予想するのは難しいのですが2016年3月末時点の長期国債の発行残高は910兆円なので、2019年11月時点ではせいぜい1000兆円であるはずで、その6割を日銀が保有することになります。

 ところが「異次元」量的緩和にはもう1つ「隠された」目的があり、それは国民の資金(主に銀行預金や郵便貯金)を日銀当座預金に吸い上げて固定し、日銀の保有国債ファイナンス(間接的な国債保有)に振り向けてしまうことです。

 2月に導入されたマイナス金利とは、200兆円以上の当座預金残高に従来通り0.1%の金利を支払い、銀行などが日銀当座預金を引きあげてしまわないための措置です。

 5月31日現在で日銀当座預金残高は286兆円もありますが、そのまま2019年11月末まで現在の「異次元」量的緩和が継続されれば、その残高は550兆円くらいになるはずです。

 ここで重要なことは、その時点で日銀が国債の総発行残高の6割を保有しているということではなく、その国債を550兆円もの国民の資金(主に銀行預金と郵便局の貯金)でファイナンスしているということです。

 全国銀行だけの集計ですが、2016年4月末時点の預金総額が680兆円、貸出総額が470兆円、その差額(といっても銀行も直接国債などを保有しています)は210兆円しかありません。つまり銀行の余剰資金はすべて日銀に吸い上げられて日本経済は完全にマヒしてしまいます。

 つまり日本の財政が健全であるかどうかの以前の問題として、日銀は消費増税実施(予定)まで現在の量的緩和を通けることが物理的に不可能になるはずで、消費増税が実施される以前に量的緩和を縮小あるいは打ち切る必要があります。

 その時点では消費増税実施による経済の停滞に加えて、国債市場で利回り上昇などの混乱が加わる恐れがあります。その事態を避けるためには、いますぐにでも現在の「異次元」量的緩和を大幅に縮小する必要がありますが、それこそ日本経済と国債市場を正常に近づける正攻法であることも間違いないはずです。