そろそろ出始めた英国のEU離脱の「憂慮すべき兆候」 その1

 英国のEU離脱決定から約2週間が経過し、そろそろ「憂慮すべき兆候」が思いもかけない方向から出始めています。いくつか列挙しますが、1回では書ききれないので明日も続けます。

 その1  英国の不動産ファンドが解約停止に追い込まれた

 昨日(7月5日)までに少なくとも3つの英国商業不動産ファンドが顧客との取引停止(要するに解約停止)に追い込まれています。この3つとはスタンダード・ライフ・インベストメンツ、M&Gインベストメンツ、アビバ・インベスターズのことで、これら3つの不動産運用総額は91億ポンド(1兆1600億円)に上ります。

 市場では早くも、2007年8月にBNPパリバ傘下の3つのMBSモーゲージ担保付き債券)ファンドが解約停止に追い込まれ、そこから1年1か月後にリーマンショックを含む世界金融危機となったことを「連想」する向きがでています。

 リーマンショック直前のMBSおよびその担保となる住宅ローンの劣化は誰もが認識していましたが、現在の英国を含む世界の不動産市況がそれほどバブルとは誰も認識していなかっただけに、英国のEU離脱(これも本当の離脱になるのかどうかもわかりませんが)をきっかけに、今後の日本を含む世界の不動産および不動産ファンドへ影響が拡散する恐れがあります。

 これは悲観論を言っているのではなく市場心理とはそういうものだからです。またそうなると特に欧州の銀行の資産内容も悪化することにもなり、当の英国だけでなく日本を含む世界経済にもかなり影響が出る可能性があります。100%英国内の政治問題だったEU離脱が、世界経済に本当に深刻な影響を与える「最初の兆候」となるような気がします。

 

その2  英国の金融緩和期待・ポンド安・英国株高

 本日(7月6日)、ポンドは一時1ポンド=1.2796ドルと1985年以来のポンド安となり、対円でも一時1ポンド=128.79円と、欧州債務危機と超円高が重なった2011年10月の1ポンド=116.95円にも接近しています。

 6月24日の国民投票開票作業が始まったばかりのころは、まだ残留予想が支配的だったこともあり1ポンド=1.50ドル、1ポンド=160円あたりの水準でした。

 ところが英国株(FT指数)はポンド安の恩恵もあり、国民投票前日(6月23日)終値の6338ポイントから先週末(7月1日)には6557ポイントと本年最高値となり、本日も現地時間正午時点で6480ポイントと依然として国民投票前の水準を上回っています。

 「とばっちり」を受けた方の日経平均が本日も290円安の15378円(終値)と、6月23日の16238円を大きく下回っていることと大違いです。

 このポンド安と英国株高の背景には、イングランド銀行中央銀行)による金融緩和がほぼ確実視されていることがあります。

 実はイングランド銀行政策金利は2009年3月以来ずっと0.5%に据え置かれています。そのあとからECBをはじめスイス、スウェーデンデンマーク中央銀行がマイナス金利(運用側だけですが)を導入したため、英国は同じく政策金利を0.5%に据え置いたままのノルウェーと並ぶ「欧州の高金利国」となります。

 さらにイングランド銀行は同じく2009年3月から資産を購入する量的緩和を続けていますが、その上限は何度か拡大されたものの総額3750億ポンド(48兆円)と「ささやか」であり、しかも2012年10月からは新規の買い入れを停止しているため直近のイングランド銀行の準備預金は3000億ポンド(38兆円)しかありません。

 日銀の当座預金は300兆円をこえていますが、要するにイングランド銀行には金融緩和の余力がタップリあり、その効果もそれなりに期待できることになります。

 ここで最悪の事態とは、「とばっちり」で円高・株安に襲われている日本でも「何だ、やっぱり追加緩和すれば円安・株高になって、GPIFの運用成果もよくなるのではないか?」などの安直な考えから、日銀の追加緩和がまたぞろ現実味を帯びてきてしまうことです。

 日銀の追加緩和とは、日銀が買い入れる国債など資産額を「もっととんでもなく異次元」にしてしまうことと、マイナス金利のマイナス幅をもっと拡大させる組み合わせとなります。

 それを受けて本日(7月6日)の国債利回りは、2年国債がマイナス0.34%(つまり0.1%ずつ2回程度の金融緩和=マイナス幅の拡大を織り込んでいる)、10年国債が一時マイナス0.285%、20年国債まで一時マイナス0.005%、30年国債も一時0.015%と、軒並み史上最低を更新しています。

 国債利回りがここまで低下する「恐ろしさ」と「さらなる追加緩和の恐ろしい弊害」、それに世界を見回して目につくほかの「憂慮すべき兆候」などは明日に続きます。