またまた厄介な海外投資ファンドの上陸

 本日(8月1日)発信したメルマガ「闇株新聞 プレミアム」でも詳しく取り上げた内容ですが、論点はかなり変えてあります。

 空売り専門ファンドなのかリサーチ会社なのか紛らわしい社名ですが、日本に進出したばかりのグラウカス・リサーチ・グループ(以下「グラウカス」)が、伊藤忠を栄えある「空売り推奨の第1号」に選びました。

 グラウカス(Glaucus)とは、強烈な毒のある生物でも食べてしまう海洋生物にちなんだ名前ですが、2011年創業のカリフォルニアを本拠地とする投資ファンドです。粉飾決算など不正を抱えていそうな企業を探し出し、自己資金で空売りポジションを積み上げてから、その企業を徹底的に叩くレポートを配信して市場の感心を高めつつ「不正発覚」を待つ投資スタイルです。

 推奨は当然に売り推奨(空売り推奨)だけで、しかも業績悪化などによる売り推奨ではなく、あくまでも「不正発覚」による株価の大幅下落を待つスタイルのようです。

 レポートは誰でも無料で読めるためリサーチ会社とは言えません。今まで米国や東南アジアで22社の投資実績(空売り実績)があり、そのうち5社の経営者が証券詐欺などで告発されているそうです。

 さてグラウカスが7月27日に配信したレポートでは、伊藤忠が2015年3月期決算でコロンビアの炭鉱の持ち分出資を一般投資に区分変更して1531億円の減損を免れたことを最も問題視しています。

 そして伊藤忠の2015年3月期の純利益が3006億円であったため、その50%以上の純利益が「不正計上」だった可能性があるとして、伊藤忠の目標株価をレポート発信直前の株価(7月26日の1262円)から50%減の631円として「強い売り推奨」としています。

 それ以外にも2015年に6000億円出資したCITICの持ち分利益を計上していることや、出資先である中国食品大手・頂新からの600億円の特別利益なども問題視しています。

 正直な印象は、比較的どこにでもある決算処理の考え方の違いでとくに大騒ぎするほどのものではなく、ましてや将来的にも「不正決算」と認識される可能性があるとも思えません。

 まあグラウカスのビジネスモデルとしては、何が何でも「不正」に結び付ける必要があるのでしょうが、2015年3月期の最終利益が実際に半分だった可能性があるとしても目標株価が現在の半分というのも単純すぎます。

 しかし日本の株式市場は何でも「舶来もの」は尊重する傾向が強いため、伊藤忠の株価はレポート発表前日(7月26日)の1262円から、発表当日(7月27日)には一時1135円と前日比10%も下落し、本日(8月1日)終値も1170円と発表前日比7.2%安となっています。

 また伊藤忠もレポート発表当日に反論IRを出していますが、監査法人トーマツ)から適正意見を得ているとか、持ち分投資の一般投資への区分変更は問題がないなどと繰り返すだけで、最も重要な投資対象の資産性・健全性には全く言及できていません。

 ここはグラウカスの栄えある「空売り推奨の第1号」となった伊藤忠としては、所詮は会計上の考え方の問題なので正々堂々と反論しておく必要があります。そうでないと第2、第3の伊藤忠がすぐに出てきて、いつの間にかグラウカスが「正義の味方」のように称賛されるようになり、空売りで大儲けされてしまうことになります。

 それではグラウカスの、最初に自己資金で空売りポジションを積み上げてから、その企業を徹底的に叩くレポートを配信する手法は問題がないのでしょうか?

 これは99%クロです。明らかな風説の流布に該当します。

 仮に本誌(闇株新聞)がある銘柄(例えばオリンパス)を空売りしておき、すぐに本誌にその銘柄の悪いニュース(例えば巨額損失隠しの詳細)を掲載すれば、すぐに証券取引等監視委員会がやってきて本誌(闇株新聞)が刑事事件の対象とされてしまいます。

 グラウカスのビジネスモデルは、レポートが正確であるかどうかを別問題とすれば、これと全く同じことですが、「舶来もの」を尊重するのは当局も同じなので、ますます増長させてしまうことになりかねません。

 いろいろな意味で大変に注目しているグラウカスVS伊藤忠の対決です。