GPIF運用体制の何が問題なのか?

 GPIFの2015年度の(2016年3月末までの)運用実績が7月29日に「やっと」発表されました。明らかに7月10日に投開票された参議院選挙が終わるのを待っていたようですが、そうとも言えないので業務概況書を130ページに「充実」させての発表となりました。

 結果は、2015年度の運用利回りがマイナス3.81%、運用損が5兆3098億円、年度末の資産総額が134兆7475億円となりました。

 本日の記事は、2015年度中に国民の年金資産が5兆円以上も「吹っ飛んだ」ことを大騒ぎするものではありません。確かに年金運用は長期運用なので、あまり目先の損得に一喜一憂するべきではなく、事実そういう「言い訳」もあちこちから聞こえてきます。

 しかし現体制のGPIFは、その適切な長期運用ができているのでしょうか?

 発表された業務概況書では、市場運用を開始した2001年度以降、運用利回りが年率で2.70%、累積運用益が45兆4239億円であると強調されています。ここでいう運用益とは評価損益も含めたものです。

 2001年以降10年国債利回りが2%をこえたことがなく、また2001年度初めの日経平均も20000円前後で現在より高かったため、その間の運用利回りが2.70%というのは決して悪くありません。

 また大雑把に言うと2016年3月までの累積運用益は45兆円ですが、2015年3月までなら50兆円、2014年3月までなら35兆円、2013年3月までなら25兆円、2012年3月までなら14兆円となっていました。

 どこかに出ているのかもしれませんが過去の四半期毎の数字がないため推測するしかありませんが、2012年12月の第二次安倍政権の発足(アベノミクスの開始)以降2016年3月までの累積運用益がだいたい30兆円、2014年10月の追加量的緩和とGPIF資産構成比率の大幅変更以降なら10兆円弱のはずです。

 ただ本年4月以降も円高・株安が続いており、日本株全体の値動きを表すTOPIXは3月末の1347.20から本日(8月2日)が1300.20と3.5%下落しており、円相場は3月末の1ドル=112.56円が本日午後9時現在で101.55円と9.8%も「円高」になっています。

 4月以降も国内債の利回り低下(価格上昇)が続いていることやNYなど海外株式が比較的堅調であることを考えても、3月末からさらに数兆円の運用損となっているはずです。

 つまり2014年10月31日の追加量的緩和とGPIF資産構成比率の大幅変更が「明らかに」間違っていたことになり、そこから本年3月末までに積みあがっていた10兆円弱の累積運用益は(本日現在ではさらに半分くらいになっているはずですが)、早晩ゼロになると覚悟しておかなければなりません。

 そうなってもアベノミクス開始以降の累積運用益が20兆円積みあがっているわけで「それでよし」と考えるしかありません。

 ここで早晩ゼロになると考える理由は、現在のGPIFの資産内容、さらには現在の水野弘道CIO(最高投資責任者)の運用体制が「大変に下げに弱い」体質のままだからです。

 ここでいう「下げ」とは、内外の株価下落、円高、(とくに)日本国債の利回り上昇のことで、日本国債については利回りの急上昇(価格暴落)は全く予想していませんが、現在の異常なマイナス金利が少しでも正常化しただけで大きなダメージになります。

 これらは裏を返せば2014年8月頃から(明らかにフライングで内外株式、外国債を大量に買い始めていた頃から)円安・株高のピークを付けた2015年6月頃までは「上げには多少強い」体質だったのですが、そこからの軌道修正がほとんどできていません。

 2015年度末(2016年3月末)の資産別構成比は、国内株が21.75%、外国株が22.09%(国内株式より多い!)、国内債が37.55%、外国債が13.47%、短期商品が5.14%となっています。

 それぞれの2015年度内における運用利回りは、国内株がマイナス10.80%(3兆4895億円の運用損)、外国株がマイナス9.63%(3兆2451億円の運用損)、国内債がプラス4.07%(2兆94億円の運用益)、外国債がマイナス3.32%(6600億円の運用損)となっています。

 ここで軌道修正ができず「大変に下げに弱い」体質のままなら、アベノミクス開始以降に積み上げた累積運用益まで「吹き飛ばしてしまう」ことになります。現時点でGPIFについて大騒ぎしなければならないところは、まさにこの体質と体制となります。