GPIF運用体制の何が問題なのか? その2

 8月3日付け「同題記事」でも書き足りなかったので、いただいているコメントも反映しながら続編を書くことにします。ポイントを3つに絞ります。

 まず1つ目は、GPIFは運用を委託している運用会社に巨額の手数料を支払っているのか?とのコメント(ご質問)ですが、発表されたばかりの業務概況書の18ページに2015年度の運用委託機関・資産管理機関・システム会社等への支払い合計が405億円と出てきます。それだけだと運用資産額に対する割合が0.03%だけです。

 しかしこれはあくまでも支払い報酬・手数料として直接支払ったものだけで、実際には各運用機関に委託している運用財産から毎年(毎月もあります)かなりの運用報酬等が差し引かれているはずです。

 だいたいインデックス型の平均的な運用報酬は、国内債券タイプが0.10%、国内株式タイプが0.20%、外国債券や外国株タイプだとそれぞれその2倍以上といったところです。

 平均して0.20%としても、毎年2700億円くらいが運用財産から差し引かれているはずです。運用成果がこれら運用報酬等控除後の数字となっているため、目立たないだけです。

 2つ目は、GPIFはオルタナティブ運用を加えるべきとのコメントを頂いています。確かにインデックス型だけだと相場が下落すると運用成果もマイナスになるため、絶対収益を追求するオルタナティブ型の運用を加えるべきとの意見はあります。

 そんな運用が簡単にできるなら苦労はしません。

 

 現在の水野弘道CIO(投資最高責任者)体制となったGPIFの運用で、本誌が最も危惧していたことが、このオルタナティブ運用(具体的にはプライベート・エクイティヘッジファンドへの運用)を大規模に始めてしまうことでした。

 官邸と厚生労働省のパワーゲームの産物で指名された水野CIOとは、もともとプライベート・エクイティ会社にいたことがあるだけで運用の専門家ではありません。そこで率先して「自分が唯一詳しい」プライベート・エクイティに運用資金を大量につぎ込み、気がついたら「びっくりするくらいの損失」を抱えてしまう懸念がありました。

 業務概況書の36ページに、プライベート・エクイティの2015年度末の時価総額が19億円(ちゃんと始めていました)、評価損益が5億円のマイナスと「そっと」出ています。まあ5億円くらいの評価損で(あと19億円も吹っ飛んでしまうと思いますが)済めば、それでよかったのでしょうね。

 8月3日付けの「同題記事」にも書きましたが、現時点のGPIF最大の問題は「下げに弱い」体質のままで全く軌道修正ができていないことで、このままではアベノミクス開始以来積み上げた運用益まで吹っ飛んでしまう恐れがあります。

 官邸が押し込んだ水野CIOは明らかに力不足で、官邸(とくに菅官房長官)には任命責任があります。一刻も早く更迭すべきです。

 3つ目は、GPIFの「訴訟ビジネス」です。業務概況書の50ページに「有価証券虚偽記載に伴う訴訟」という項目があり、2件の「成果」がでています。

 西武鉄道では信託銀行が代表して2005年10月に185億円の損害賠償請求訴訟を提起し、2015年7月に最高裁判所で勝訴が確定して142億円を回収しています。またオリンパスではこれも信託銀行が代表して2014年4月に38億円の損害賠償請求訴訟を提起し、2015年4月に東京地方裁判所の調停で終結し21億円を回収しています。

 西武鉄道については継承会社の西武ホールディングスが十数人の株主に合計309億円を支払った中に含まれており、西武ホールディングスは本年2月にそのうち255億円を堤義明氏に弁済させています。

 堤氏はその支払いのために持ち株をすべて売却したのですが、密かに西部ホールディングスに(正確には後藤CEOとみずほ銀行に)反撃の機会を伺っているようです。

 オリンパスについては信託銀行7行が合計279億円の損害賠償請求を行っていた中に含まれており、調停内容はオリンパス守秘義務のためとIRしていませんでした。それをGPIFがわざわざ公表したことになります。まあせっかくの「成果」なので概況書に載せておきたかったのでしょうね。

 ちなみにフォルクスワーゲン集団訴訟手続きにも参加しているようです。

 以上、すべてがGPIFの問題点というわけではありませんが、せっかく130ページの業務概況書をまとめてくれたので、パラパラとめくっているうちに目についたところです。