ところで東芝の旧経営陣は無罪放免となったのか?

 最近さっぱり報道されなくなった東芝ですが、水面下では刑事事件化を巡り熾烈な駆け引きが続いているそうです。

 東芝の不正会計については、証券取引等監視委員会が2015年12月25日に史上最高となる73億円余の課徴金納付を金融庁に勧告して行政処分は完了していますが、返す刀で歴代3社長を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で刑事告発しようとしています。

 ところが証券取引等監視委員会がトップ主導で刑事告発しようとしても、その告発を受けて起訴する検察庁(具体的には東京地検特捜部)が逡巡しているという大変に珍しい構造のようです。

 そもそも証券取引等監視委員会とは佐渡賢一・委員長をはじめ多数の幹部を送り込んでいる検察庁の牙城であり、必ず共同歩調で経済事件の摘発を行います。というより「ほとんど同体」であり、このように足並みが揃わないことは大変に珍しいことになります。

 ここで証券取引等監視委員会は、粉飾決算でもインサイダー取引でも株価操縦でも軽微なものは課徴金処分で済ませ、悪質・金額が大きい・社会的影響が大きい・会社ぐるみなどに該当すれば強制調査権のある特別調査課が乗りだし、検察庁(このケースは東京地検特捜部)に刑事告発して刑事事件となります。

 つまり東芝の不正会計については、検察庁は表向きでは「悪質でない」「金額が大きくない」「社会的影響が小さい」「会社ぐるみではない」と判断していることになります。

 

 間違っても「東芝は歴代の経団連会長(2名)や日本郵政社長(当時)らを輩出した名門企業であり、世界的な原発企業でもあるので、諸事情を斟酌すると歴代社長らを逮捕して法人としての東芝も含めて被告席に座らせないほうがいいと判断している」というわけにはいきません。

 実際、「2000億円をこえる粉飾額ではあるが、パソコンや半導体やテレビなど各部門を寄せ集めたもので一つひとつは小さい。また期末に部品などを高値で別会社に押し込み利益を計上する手法も、自動車メーカーや自動車ディーラーも行っている」など、これが検察庁のセリフなのか?と思うような解釈まで伝わってきます(FACTA・10月号から)。

 そもそも金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)とは、虚偽が記載された有価証券報告書が提出されているかどうかだけを問う形式犯罪であり、上場会社であれば必ず提出しているので起訴さえすれば確実に有罪となります。

 つまり虚偽記載につながる行為(不正会計)が悪質なのかとか、金額が大きいかなどを吟味する必要もないはずです。

 まあどちらになっても後々のことがあるため「課徴金処分で済む」と「刑事事件になる」の境界線がどこなのかをはっきりさせるべきです。その都度「よきに計らう」では納得できません。

 例え「東芝は名門企業なので刑事事件にしないことが妥当と判断した」でも「オリンパスと違い海外メディアから報道されたわけではないので刑事事件化する必要がない」でも、うやむやになるよりは後々の参考になります。

 それでは本誌が考える東芝の不正会計で「最も悪質なところ」はどこでしょう?

 東芝は2015年9月8日に2248億円もの(あとで2306億円に増額)過去の決算修正を行っています。これは第三者委員会の調査を含めて徹底的に過去の帳簿を洗って「見つけ出したもの」であるはずですが、たったそこから半年後の2016年3月期にまた新たに7087億円もの営業赤字が「どこからともなく」出ています。

 つまり2015年9月8日に発表した過去の決算数字より、はるかに巨額の損失が「新たに出てきた」わけではなく、まだまだ隠していた過去の損失を一気に2016年3月期の損失として「表に出した」と考えたほうが自然です。

 過去の損失とすると粉飾決算となる可能性がありますが、2016年3月期中に新たに発生した損失として発表してしまえば粉飾決算とはなりません。つまり東芝は過去の粉飾決算を「2016年3月期に発生した損失」に紛れ込ませて最終処理してしまったと考えます。

 これを証券取引等監視委員会が見落としているということは「絶対に」ないはずですが、白昼堂々と過去の損失隠しがまかり通ってしまったわけです。これだけ見ても東芝が刑事事件となるはずがないような気がします。