空売りファンドが大挙して押し寄せる予感

 8月2日付けと4日付け「またまた厄介な海外ファンドの上陸 その1~2」で、グラウカスなる空売りファンドの伊藤忠への売り推奨レポートについて書きましたが、ポイントは単なる会計上の考え方の違いをとらえて売り煽っているだけのもので、市場参加者も伊藤忠も冷静に対応すべきというものでした。

 伊藤忠の株価は、レポート発信前日(7月26日)終値の1262円から一時10%下落しましたが、本日(8月23日)は1189円(5.7%安)と落ち着きを取り戻しています。

 ところが案の定、その次が出てきました。今度はシトロン・リサーチなる空売りファンドが8月15日にサイバーダインへの売り推奨レポートを発信しました。

 シトロンとはレモンに似た柑橘類で日本でも名前につけた清涼飲料水がありますが、このアンドリュー・レフト氏が率いるシトロン・リサーチはグラウカスよりはるかに大規模で投資実績(成功例)のある空売りファンドです。

 あらかじめファンド資金で空売りポジションを積み上げてから、売り推奨レポートで徹底的に叩く手法はシトロンもグラウカスも同じです。

 ここでシトロンとサイバーダインの組み合わせは、グラウカスと伊藤忠の組み合わせとは全く違い、はるかに成功する可能性が高く、したがって日本における戦線をさらに拡大する可能性が高く、さらに類似の著名ファンドを日本に呼び込む可能性も高いと感じます。

 サイバーダインの株価は、レポートが出た8月15日(終値)の2077円から本日(8月23日)は1558円と25%も下落しています。ちなみに目標価格は300円だそうです。

 サイバーダインの2016年3月期通年決算では、売上高が12億6400万円、営業損益が12億9200万円の赤字(売り上げより赤字が大きい)、最終損益が7億1800万円の赤字と惨憺たるものですが、何でもロボット技術が有望だとかで公募増資や第三者割当増資や新株予約権社債の発行を繰り返し、2016年3月末現在で純資産が270億円、現預金が145億円もあります。

 まさに株式市場を使った錬金術では間違いなく「勝ち組」となります。

 そんなサイバーダインの時価総額は売り推奨前に2852億円もありましたが、さらに驚くべきことに社長の山海氏がほとんどを保有する優先株(非上場、議決権が普通株の10倍もある)があり、これを普通株と等価で計算しても時価総額は4465億円もありました。

 シトロンのレポート冒頭に、サイバーダインの時価総額が4億ドル(400億円)以上もあり、とんでもなく高いと書かれていますが、これは翻訳ミスで40億ドル以上のはずです。シトロンのレポートは、明らかに金融の知識が乏しい翻訳家を使ったようで珍妙な表現が多く、またシトロンも翻訳された日本語レポートを読めないため確認ができていないのでしょう。

 要するにサイバーダインは、新興市場によくある「事業モデルが夢物語でありながら株価が説明できないほど高い銘柄」ですが、それなりの時価総額流動性出来高)があり、何よりも海外株主が多く(ざっと数えて発行済み普通株の10%以上の1500万株ほどあります)貸株調達が容易であるはずです。

 シトロンに限らず海外投資家は必ず海外で貸株調達して売却するため、日証金東証発表の信用残には現れません。つまり実績のある空売りファンドのシトロンは日本の株式市場において「説明ができないほど株価が高い新興市場銘柄」のなかから、時価総額流動性出来高)もあり何よりも貸株調達が容易でまとまった空売りが可能なサイバーダインに目をつけたことになります。すでに時間をかけてかなりの株数を売却済み(実質的に空売り済み)のような気がします。

 グラウカスによる伊藤忠の売り推奨については「放っておくべし」と考えた本誌も、シトロンによるサイバーダインの売り推奨については、残念ながらかなりの確率で「大儲けされてしまう」と考えます。

 そして今まで日本に上陸していなかった著名な空売りファンドが、このサイバーダインの成功例をみて大挙して上陸してくる予感がしています。そうなると対象は何も新興市場に限らず、最近とくに低迷する日本経済や企業業績に比べて割高に見える銘柄も少なくないため、軒並み荒稼ぎされてしまう予感がしています。

 そうなると売り推奨レポートの出来栄えは関係なく、純粋に著名空売りファンドの「手腕」が発揮されるとも感じます。

 続編をすぐに書くことになりそうです。