百家争鳴となりそうなジャクソンホール

 ここのところ何度か書いていますが、円相場や日経平均に限らず世界中ほとんどの金融市場が狭い取引レンジに収まる「安定期」に入り、たぶん「年内いっぱい」くらいはこの状態が続くと考えています。

 これは世界の経済や金融情勢や投資家動向が落ち着いてきているからではなく、例えば日本で円高・株安になると追加金融緩和期待が盛り上がり実際に日銀のETF買入れ枠が倍増され、米国では景気回復の兆しが見えるとすぐに利上げ予想が優勢となり株式市場にブレーキがかかるなど、市場が勝手に金融政策(など)の方向を斟酌してしまうからです。

 わかりやすく言えば、金融当局と市場参加者と評論家諸氏が寄って集って(たかって)各市場を狭いレンジに押し込めてしまっていることになります。

 これは往々にして世界の各金融市場が「本来あるべき水準」から大きくかい離していくことになり、ある日突然、何かのきっかけで大混乱に陥ることになります。それでも世界的なボラティリティ低下は始まったばかりで「まだまだ大丈夫」と考えます。

 さてそんな中で本年も8月25~27日にジャクソンホールでシンポジウムが開催され、FRBのイエレン議長をはじめ世界の中央銀行総裁などが一堂に会します(まだ本年の最終的な出席者は公表されていません)。

 

 ジャクソンホールのシンポジウムとは、FRBカンザスシティ地区連銀が毎年この時期にワイオミング州北西部の谷間にあるジャクソン市で開催するものです。この地域はイエローストーン国立公園に近い避暑地で(その代わり冬は極寒です)、ジャクソン市はこの谷間にある最大都市ですが、それでも人口は8000人程度の田舎町です。

 日本では最近までそれほど注目されていませんでしたが、歴史的には重要な「密談」がシンポジウムの合間に行われていたり、講演で思いもかけなかった重要発言が飛び出したことがあります。最近では2010年8月にバーナンキ議長(当時)が市場で全く想定されていなかった量的緩和に言及し、実際に同年11月からQE2(6000億ドルの長期国債買入れ)が実施されたことがあります。

 本年のシンポジウムでは、昨年欠席したイエレンFRB議長が26日に講演する予定で、早くも世界中が注目しています。

 イエレン議長の講演内容に限らずシンポジウムにおけるほとんどすべての論議は、まさに世界中の金融当局者が「各市場を狭いレンジに押し込める」ためのものとなりそうです。

 さらにそれをうけて世界中のエコノミストや評論家の類(たぐい)が同じように喧噪し、それを見た世界中の市場参加者が同じように動くため、ますます「各市場が狭いレンジに押し込められる」ことになります。

 さらにこうなると、仮に世界の経済や政治に「突発的事件」が起こっても、ますます各市場の混乱を鎮める力が働くと予想(期待)されるため、一時的ショックがあっても短時間で「各市場はまた狭いレンジに押し込められる」ことになります。

 オバマ政権が完全に世界の政治に対する指導力を失っているように(米国内でもすっかり失っていますが)、FRBも世界の金融市場に対する指導力を失っています。

 だいたいFRBが、中国経済や英国のEU離脱の影響や新興国経済(例えばブラジルやメキシコなど)にいちいち気を遣うので結果的に身動きが取れず、やはり「各市場が狭いレンジに押し込められていく」わけです。

 今年のジャクソンホールでも、イエレン議長が世界の金融市場を混乱させるような発言をするはずがなく、全く気にする必要はありません。

 利上げするとか延期するとか延々と議論しても、そうしているだけで高給がもらえるエコノミストや評論家の類(たぐい)が失業しないだけで、本当に見極めなければならない(たぶん来年ですが)大混乱の予兆は見極められません。

 要するにそういう時期にジャクソンホールのシンポジウムが開催されるわけです。さぞかし百家争鳴となりそうですが、あまり気にしないことです。

 まだ夏休みを取られていない読者の方がいらっしゃいましたら、ゆっくり取られても大丈夫です。

 本誌は遅れに遅れているオリンパス新刊本を「ねじり鉢巻」で完成させています。題名は「誰も書かなかったオリンパス事件の真相」になりそうです。本当に新事実がテンコ盛りになっています。