GPIF運用体制の何が問題なのか?  その3

 8月3日付け「同題記事」、同5日付け「同題記事 その2」の続編ですが、GPIFは8月26日に2016年4~6月期の運用状況を発表しました。

 2015年度通年(2015年4月~2016年3月)と2016年1~3月期の運用状況が7月29日にやっと発表されたばかりだったので、電光石火の発表で逆に「何かあるのか?」と穿ってしまいましたが、昨年もほぼ同じ8月27日に発表されていました。

 その2016年4~6月期の運用成果は、期間収益が5兆2342億円のマイナスで期間収益率も3.88%のマイナスとなりました。2015年度通年は5兆3098億円のマイナスで、2016年1~3月期だけでも4兆7990億円のマイナスでした。

 また2001年の市場運用開始以来2016年6月末までの累積収益額が40兆1898億円となり、この間の累積収益率は年率2.39%となります。累積収益額とは実現損益に評価損益を加えたものです。

 また2016年6月末の運用資産額は129兆7012億円で、ピークだった2015年6月末からたった1年で11兆4197億円も減っています。またその1年間の運用損失は13兆2685億円にもなります。

 最大の問題は、日銀が追加量的緩和に踏み切りGPIFが資産構成割合を大幅に変更した2014年10月以降の累積収益が1兆962億円のマイナスとなったことで、積極的な運用姿勢に転じたこの1年9か月の期間損益が結局1兆円以上のマイナスとなってしまいました。

 また2001年4月の市場運用開始からアベノミクスがスタートした2012年12月末まで11年9か月の累積収益額は22.4兆円、アベノミクスがスタートしてから2016年6月末まで3年半の累積収益額は17.8兆円となっています。

 さらにアベノミクスがスタートしてから、最初の中国ショックに襲われる直前の2015年6月末までの2年半で31兆円を稼ぎ、そこから1年で13.2兆円を「吹き飛ばした」ことになります。

 さて2016年6月末現在の運用資産別構成残高を見ると、国内債券が50.79兆円(39.16%)、国内株式が27.31兆円(21.06%)、外国債券が16.79兆円(12.95%)、外国株式が27.64兆円(21.31%)、短期資産が7.14兆円(5.51%)となっています。

 これに対して累積収益額と運用資産額(141兆1209億円)がともにピークだった1年前の2015年6月末は、国内債券が53.55兆円(37.95%)、国内株式が33.00兆円(23.39%)、外国債券が18.46兆円(13.08%)、外国株式が31.50兆円(22.32%)、短期資産が4.61兆円(3.27%)となっていました。

 この1年間の資産別運用額の変化を眺めると、運用成果が大幅マイナスだった国内株式、外国債券、外国株式はほとんど「目減りするがママに放置」していたことになり、唯一の運用成果がプラスだった国内債は「放っておくと運用比率が上がってしまうため機械的に売却していただけ」だったようです。

 つまり2014年10月に資産構成比率を大幅に変更し、同時に運用体制も大幅に変更したGPIFの運用とは、その時点における株式や為替の水準など全く顧みることなく「あっという間に」国内株式と海外株式・債券の残高を目いっぱい増やしてしまい、2015年8月以降に急激な円高・株安となると、今度は「狼狽したままほとんど何もできず」現在に至るようです。

 GPIFは、よく「年金運用は長期運用なので長い目で見てほしい」といっていますが、やっていることは、まるで超短期のトレーディングでもしているように円安・株高となる中で国内株式・海外株式・債券を目いっぱい増やしてしまい、一転して円高・株安となるとまるで「損切もできずに狼狽するだけの素人投資家」になってしまっています。

 冗談ではなくGPIFとは、典型的に運用に(長期運用でも短期運用でも)向いていない人達が、とんでもなく巨額資金を預かっているという「大変に恐ろしい構造」です。

 アベノミクスのスタートから2年半で31兆円も稼いだといっても、単なる向う見ずのトレーディングが当たっただけで、このままだとすっかり吐き出してしまうことになるかもしれません。トレーディングと運用は全く違います。

 早急にGPIFの運用体制を何とかしないと大変なことになってしまいます。