ウェルズ・ファーゴはいったい何をやっていた?

 本日配信のメルマガ「闇株新聞 プレミアム」でも簡単に取り上げたのですが、もう少し詳しく解説します。報道だけでは全く納得できず、要するに違和感だらけの事件となります。

 米消費者金融保護局(CFPB)は9月8日、米大手銀行のウェルズ・ファーゴが顧客に無断で預金口座開設やクレジットカード発行などの違法行為を繰り返し、同行が1億8500万ドル(190億円)の罰金をCFPBに支払い、また顧客への損害賠償として500万ドル(5億円、少なすぎますが間違いではないようです)を支払うことで合意したと発表しました。

 巨額罰金ビジネスの米国政府機関では、総額1億9000万ドルの和解金は決して大きくありませんが、どう考えてもよくわからない事件です。

 何よりもウェルズ・ファーゴでは、こういう違法行為が2011年以降継続的に行われており、顧客に無断で開設された口座が150万件、発行されたクレジットカードが56万枚、当然にそれらはタダではないため(米国では預金残高が一定金額を下回ると手数料が自動的に徴収されます)顧客から不正に徴収された手数料総額が260万ドル(少なすぎますが間違いではないようです)という大がかりな事件となります。

 さらにウェルズ・ファーゴは2011年以降、5300人もの従業員をこれら違法行為にかかわっていたとして懲戒解雇しています。またその背景には無理な営業ノルマや実績に基づく報酬体系があるとも言われています。

 要するにウェルズ・ファーゴでは、従業員が営業ノルマの達成や実績報酬を得るために150万件以上の口座を不正に開設させ、56万枚以上のクレジットカードを不正に発行させ、2011年から5年ほどの間に5300人もの従業員が懲戒解雇されたことになります。

 これに対してウェルズ・ファーゴの経営陣が、お咎めを受けた事実はなさそうです。

 これで納得しろと言われてもできませんが、とにかく米国政府機関と和解してしまったため、これ以上の情報が出てくるとも思えません。「何か大きなものが覆い隠されてしまった」と感じますが、他の大手銀行からも似たような話が出てくるような気もします。

 これは世界の大手銀行が米国政府に巨額罰金を支払ったマネーロンダリング経済制裁国との取引やMBS不正販売のような大口取引や投資銀行業務ではなく、ごく普通の預金者を相手した純粋のリテール銀行業務で大規模な違法行為が行われていたことになり、それだけ銀行業界のイメージ低下も大きいような気がします。

 だから米国政府機関も「さっさ」と和解して問題が拡散しないようにしたような気もします。

 さらに今回問題が発覚したウェルズ・ファーゴとは、リーマンショック以前も以降も投資銀行業務に見向きもせず、ひたすら純粋のリテール銀行業務に特化して業容を拡大させ、今では世界最大の株式時価総額の銀行となります。全企業の時価総額でも世界10位(8月31日現在)です。

 またウェルズ・ファーゴの2016年4~6月期決算では純利益が55億5800万ドル(5660億円)もあり、大雑把に言うと年間2兆円以上の純利益を稼ぐ超高収益銀行でもあります。ちなみに今回の罰金と損害賠償の合計は195億円で、その1%以下です。

 先週末のウェルズ・ファーゴの株価は48.72ドルと、直近高値(8月31日)の50.80ドルからそれほど下落しているわけではなく、先週末の時価総額も2458億ドル(25兆円)もあります。日本のメガバンクグループで時価総額最大の三菱UFJフィナンシャル・グループは7.5兆円です。

 またウェルズ・ファーゴウォーレン・バフェットのコア保有銘柄でもあり、現在もコカ・コーラやプロクター&ギャンブルなどと並んで大量に保有しています。

 要するにウェルズ・ファーゴ時価総額25兆円、年間純利益2兆円というイメージと、2011年から繰り返されてきた違法行為の細かさと、195億円という和解金額の少なさが、どうしても結びつきません。

 要するに違和感だらけの事件であり、今後の展開も全く想像できない大変に気持ちの悪い事件となります。銀行業界に限らず何か世界のよくない出来事の「きっかけ」になってしまうような気もしています。