追加緩和は「まだ可能?」  その2

 9月8日付け「同題記事」の続きですが、前回は量的緩和について書いたので、今回はマイナス金利についてです。

 まず日銀が2016年1月29日の政策決定会合で決定し、同年2月16日から実施したマイナス金利政策とは、当時260兆円(9月10日現在では304兆円)あった日銀当座預金のうち10~30兆円だけにマイナス0.1%の金利を適用するもので、200兆円以上の残高に対して従来通りプラス0.1%の金利を支払うという歪(いびつ)なものでした。

 ところが「たったこれだけのマイナス金利」で、短い年限の国債だけでなく40年の超長期国債の利回りまで「とんでもなく」低下してしまいました。7月には10年国債利回りが一時マイナス0.30%、20~40年国債利回りも0.02~0.06%とほとんどゼロになりました。

 そもそも日銀はマイナス金利を導入する目的として、短期金利をゼロ以下にして長期金利も引き下げようとしたのか、(長期金利は比較的高止まりさせて)長短金利差を拡大させようとしたのか、明確な説明を行わず市場を混乱させてしまいました。

 実際には短期金利よりも長期国債利回りを代表とする長期金利のほうが大きく低下してしまい、貸出金利が大きく低下した銀行の収益が悪化する結果となりました。

 銀行はマイナス金利だといっても預金金利など調達金利がすべてマイナスになるわけではなく、また人件費などのコストは変わらないため、結果的にマイナス金利政策=貸出金利低下=収益悪化となります。

 現在の日銀は旧大蔵省傘下なので「身内」の銀行収益を悪化させることも好ましくなく、かといって「マイナス金利は間違っていましたので止めます」とは絶対に言えず(官僚とはそういうものだからです)、今度の「総括検証」ではマイナス金利を維持しながら長期金利を高めに維持する工夫が凝らされるはずです。

 これは別に難しいことではなく、日銀が長期国債(とくに20年以上)の買入量を絞り、応札する銀行もできるだけ高い応札利回りになるよう「談合」すればいいわけです。すでに日本の国債市場は日銀と大手銀行・大手証券(外資を含む)が支配する管理相場になっているためこういう「利回り操作?」も可能と考えます。

 もともとマイナス金利とは「現金の価値」を最も高くするデフレ政策であり、同時に現金=円の価値を上げる円高政策となります。つまりマイナス金利政策には経済活動を低迷させる効果しかなく、そこへ長期金利まで上昇させてしまうとさらなる大不況政策となってしまいます。

 さて現行のマイナス金利は、先ほど書いたように大きな歪(ひずみ)があるだけでなく、大変にわかりにくいものです。マイナス金利の先輩であるECBは、3月から政策金利の下限金利がマイナス0.4%、基準金利がゼロ、上限金利が0.25%としています。

 上限金利とは域内の銀行がECBに預金したときに適用される(つまり費用を徴収される)ものです。9月2日現在で域内の銀行はECBに1兆1492億ユーロ(131兆円)預金していますが、そのうち法定準備を除いた3788億ユーロ(53兆円)にマイナス0.4%が適用されています。

 また上限金利の0.25%は、域内の銀行がECBから資金を借り入れるときに適用される金利ですが、実際には一時的に資金繰りに窮した銀行にECBが救済的に貸出すもので、普段は使いません。

 そして基準金利とはECBの通常オペレーションで資金を市場(銀行)に供給する金利で、現在のECBの政策金利短期金利)は有担保でゼロということになります。また銀行の貸出増加額に対して最長4年間貸し出すTLTRO(貸出し条件付き長期資金供給オペレーション)は、下限金利のマイナス0.4%まで適用されます。貸出促進のためです。

 これに対して日銀のマイナス金利とは、そもそも300兆円以上ある日銀当座預金のうち10~30兆円(それも大半がゆうちょ銀行と信託銀行)だけに適用されるもので、銀行間で短期資金を活発にやり取りするTIBOR市場では、1週間が0.013%、1か月が0.029%、3か月が0.058%と「ちっとも」マイナスではありません。

 そこで日銀も政策金利短期金利)の基準値をゼロとし(これは実質的に利下げになります)、下限金利をマイナス0.1%、上限金利をプラス0.1%とすれば「すっきり」するだけでなく、短期金融市場における利鞘も確保されます。

 そもそも量的緩和で資金を必要以上に供給しておきながら、その供給された資金にコストがかかることになり、そもそも根本的に間違った金融政策の組み合わせなのです。