日銀の「総括検証」とは量的緩和を縮小することである  その1

 黒田総裁となってからの日本銀行は(もともとそういう傾向はありますが)金融政策変更の発表時にその意味を明確に市場に伝えず、あとから「重要な変更だった」ことが明らかになることがあります。

 9月21日に発表された「総括検証」も、まさにその通りだったようです。つまり従来の量(マネタリーベースあるいは日銀保有国債の純増額)を目標とする「異次元」量的緩和から、長短金利そのものに目標を設定してそこに誘導する方法に大きく変更しています。

 これは従来の日銀が保有国債を年間80兆円純増させるという「異次元」量的緩和を、縮小させることに他なりません。なぜなら短期金利をマイナス0.1%、長期金利(10年国債利回り)をゼロ近辺に誘導することを金融政策の目標とするといっているだけで、そこに誘導されるなら日銀が国債を「異次元」に買い入れる必要はないからです。

 そして日銀は9月30日にとりあえず10月の国債買入れ額を2000億円(年間2.4兆円、80兆円の純増ペースの3%)減額すると発表しましたが、たぶん毎月これくらいずつ減少額を増加させていくような気がします。ここだけは2014年1月からQE3を縮小させたFRBの手法を真似ているようです。

 だったら最初から「量的緩和はもう効果がないので徐々に縮小します」と言ってしまえばよいのですが、そこは絶対に失敗を認めない官僚体質(現在の日銀は完全に旧大蔵省傘下です)なので、こういう回りくどい「総括検証」になるわけです。

 それではなぜ日銀は量的緩和を縮小する必要があるのでしょう?そもそも2013年4月に導入され2014年10月に強化された(追加された)量的緩和とは、アベノミクス開始のどさくさに紛れて旧大蔵官僚の黒田氏を日銀総裁に押し込み日銀そのものをやっと取り戻した旧大蔵省が、消費税率を当時の5%から10%に引き上げるために繰り出したアシストに過ぎません。

 アベノミクスのスタートダッシュのおかげで2014年4月には消費税率を8%に引き上げたものの、そこで日本経済が完全に失速してしまったため、10%への消費税率の引き上げは当初の2015年10月から(だから2014年10月に追加量的緩和を導入した)2019年10月まで4年も延期されてしまいました。

 

 つまり日銀(くどいようですが旧大蔵省傘下です)は、当初の予定より追加された量的緩和を最低4年間、国債純増額で320兆円も「余計に」継続する必要が出てきてしまったわけです。

 現在のペースだと日銀の国債保有額は2019年10月には650兆円(総発行残高の6割以上)、それをファイナンスする日銀当座預金が(国民の預金を流用しているだけです)550兆円にもなってしまい、さすがに持続不能となります。

 だから消費税率を無事に10%にしてしまうまで量的緩和を持続させるためにも、そろそろペースを緩める(縮小する)必要があるわけです。それだけの話です。

 本誌はもともと日本経済に何のプラスもない量的緩和などさっさと大幅に縮小してしまうべきと考えており、それで一時的に円高・株安・長期金利上昇となっても比較的短時間で収まると考えています。6月の英国EU離脱による世界金融市場の大混乱も短期間で収まりました。

 つまり早くカンフル注射のない日本経済と金融市場に戻すべきで、そこで新たな問題が出てくれば改めて対処すべきと考えます。実態から遊離した(ドーピング状態の)日本経済と金融市場を早く正常な姿に近づけないと、どこかで大混乱となるはずだからです。

 そういう意味では量的緩和の縮小開始そのものは好ましいことになりますが、今回の「総括検証」によるアプローチではますます辻褄が合わなくなってきます。

 今回の「総括検証」でも金融政策の目標とは2%の物価目標の実現となっており、物価の実数値が2%を安定的にこえるまでこの金融政策を継続することになっています。

 もともと2013年4月以来、なぜ日銀が国債を「異次元」に買い入れれば2%の物価上昇目標が実現するかについては、ついぞ明確な説明がされませんでしたが、それでも経済が健全に回復していれば物価も健全に上昇するはずなので、因果関係が全く逆ですが何となく言いたいことはわかりました。

 ところが今回の「総括検証」では、本来は景気が健全に回復すれば資金需要が出てきて長期金利も健全に上昇するはずのところ、長期金利をゼロ近辺に誘導して必要とあればさらに誘導目標を引き下げて2%の物価目標を実現させるということになります。

 これは因果関係が逆であるだけでなく、その目的と手段も逆である「支離滅裂」なものとなります。

 このままだといろいろ不都合が出てくるはずですが、明日に続きます。