日銀当座預金を民間銀行の「預金」と勘違いしてはいけないそうです!?

 米国大統領の投票がまもなく始まるタイミングなので、何を書いてもタイムリーな話題になりません。しかし昨日もお休みしてしまったので、あまりタイミングに影響されないこの話題にしました。

 さて本日のこの珍妙な表題は、11月3日にダイヤモンドオンラインに掲載された元大蔵官僚・高橋洋一氏の「日銀当座預金を民間銀行の預金と勘違いする人々へ」なる珍妙な記事に対するものです。

 本誌が理解する限り高橋洋一氏は旧大蔵省の「覚えがめでたい」元官僚ではないはずですが、現在の日銀を含む旧大蔵省に「よいしょ」する言動が多く、何となく不思議な人だなあと思っています。

 この記事で高橋氏は、発券中央銀行(ここでは日銀のこと)のマネタリーベースは負債といっても、それは「無利息」「償還期限なし」であるため、民間銀行の「預金」と違って実質的な債務性がないと主張されています。

 ここでマネタリーベースとは、日銀券(現金のこと)と日銀当座預金と貨幣の合計のことで、10月31日現在では日銀券が96.9兆円、日銀当座預金が315.9兆円、貨幣が4.6兆円あります。ここで貨幣は日銀の発行ではなく金額も少ないので無視します。

 つまり日銀券と日銀当座預金を合計した412.8兆円は日銀の負債ですが、高橋氏によると債務性がない、つまり日銀は返済しなくてもよいそうです。

 この話には前段があり、日本政府は1000兆円以上の負債(国債発行残高など)があるものの資産もあり、それに政府系金融機関やGPIFや郵便貯金など含めた「日本政府の連結決算」では差し引き492兆円(平成26年度末)の負債超過でしかないというものですが、ここまでは本誌も「おおむねその通り」と考えます。

 しかし高橋氏は、この「政府の連結決算」に日銀を含めるべきだと主張しています。つまり日銀は10月31日現在で403.4兆円の国債(短期国債を含む)を保有しており、日銀の負債である日銀券と日銀当座預金は返済しなくてもよいため、日銀を含めた「政府の連結決算」ではたかだか100兆円程度の負債超過でしかないとなります。

 ここで確かに日銀券の96.9兆円は返済義務がなく、それに見合う国債残高は「政府の連結決算」では負債残高から外してもよいと考えています。つい最近まで日銀の国債保有は日銀券発行残高の範囲内にとどめるというルールがありましたが、それを正式に廃止したのは黒田総裁です。

 しかしどう考えても日銀当座預金は日銀のものではなく、傘下の銀行を通じて国民の預金を保有国債ファイナンスに「流用」しているだけです。それを債務性がない、つまり民間銀行の「預金」のように返済の義務がなく、それを対価に日銀が買い入れた国債も「政府の連結決算」では返済義務がないことになります。

 高橋氏はその根拠として、日銀当座預金は白川総裁時代に0.1%の付利を行ったことは間違いで、基本的に日銀当座預金は無利息であり(それは正しい)債務性がない根拠であるとしています。つまり高橋氏の理論では、友人から無利子で借りた資金は債務ではないため返済しなくてもよいとなります。

 さらに高橋氏は日銀当座預金については、預けている銀行に資金需要が出て日銀当座預金を引き出しても、その資金は必ずどこかの銀行に預けられそこで日銀当座預金が積み増されるため全体として日銀当座預金は減らない、つまり日銀が資金不足に陥って保有国債を売却しなければならない事態など起こりうるはずがないと自信満々に主張されています。

 まあ日銀当座預金とは日銀券(現金)の代替でしかなく、ともに債務性はなく返済義務がないため、日銀はどんどん国債を買い入れて当座預金残高を積み上げればその国債は「政府の連結決算」では債務性がなく返済義務がなくなると言っていることになります。

 だったら2001年に920億ドルという「人類史上最大のデフォルト」を起こしたアルゼンチン政府と中央銀行に、ぜひ教えてあげればよかったですね。今ごろ高橋氏はアルゼンチンの名誉国民になっていたはずです。

 もちろんアルゼンチンの国中にそんな金がないからデフォルトしたわけで、仮にアルゼンチン中央銀行が920億ドルに相当するペソを発行していたら(ドルは発行できません)、きっと人類史上最大のハイパーインフレになっていたはずです。

 もちろん本誌は日銀当座預金も民間銀行の「預金」も友人から無利子で借りた金も、すべて同じで返済しなければならないと考えています。だから高橋氏の呼びかけに応じてこの記事を書きました。