円安のデメリットも考えてみよう

 円の予想レンジはどうなっているのだ?とのコメントも頂いていますが、米国大統領選直後は予想を控えています。市場を取り巻く心理状態が劇的に変化しているときは安直な予想も「後講釈」も控えて、変化の度合いとその持続性をしっかりと見極めることが最重要と考えるからです。

 本日(12月1日)の円相場は、朝方に一時1ドル=114.83円まで円安となり、午後8時現在でも1ドル=114.32円となっています。米国大統領選挙の直前の週末となる11月4日(NY終値)は1ドル=103.07円だったため、本日午後8時現在はそこから10.9%も円安となっています。

 これは同期間で比較すると、何かとトランプの目の敵にされているメキシコ・ペソの下落幅の8.0%、先日利上げに追い込まれたトルコ・リラの下落幅の9.8%よりも大きく、円はまさに米国金利高による外貨流出におびえる新興国通貨より下落していることになります。ちなみに円はトランプ当選直後の11月9日には一時1ドル=101.18円まで円高となっていたため、そこから午後8時現在まで13.0%もの下落となります。

 ところが日本では円安=株高となるため、ストレートに円安大歓迎となっています。本日の日経平均は204円高の18513円となり、1月4日の18450円を更新して終値ベースの本年高値となりました。

 さらに9月の「総括検証」で導入されたように10年国債利回りをゼロ近辺に「抑え込んで」いるため、日米の長期金利差がさらに拡大して円安が加速する要因となっていますが、これも危惧する声が全くありません。

 米国10年国債利回りは11月4日が1.77%、本日午後8時現在は2.41%と、その間に0.64%も上昇していますが、同期間の日本の10年国債利回りはマイナス0.06%からプラス0.03%へ0.09%上昇しているだけです。

 さらに本日のドル高・円安の材料としては、昨日OPECが減産合意に達しNYで原油価格が約10%上昇し、WTIで1バレル=50ドル近くまで急騰したことも挙げられます。減産そのものは9月末に合意しており、原油価格(WTI)も10月中旬に1バレル=51ドル台半ばまで上昇していましたが、米国大統領選直後には1バレル=42ドル台まで下落していました。

 

 今回はその合意した日産3250万バレル~3300万バレルの下限である3250万バレルへの減産となったものの、10月の生産水準との比較では120万バレルの減産にすぎません。ただそのうち50万バレルがサウジアラビアの減産となるため、いよいよサウジアラビアは米国のシェール対策で原油価格を上昇させない方針を転換したと好感されているようです。

 これくらいの減産合意で原油価格がどこまで上昇するかはわかりませんが、9月の減産合意時点に比べてトランプの経済政策への期待から物価上昇予想が明らかに拡大しているため、原油価格もそれだけストレートに上昇したように思えます。

 つまりここまでは、トランプの経済政策に対する期待感に加えて物価上昇予想が膨らむことによる米国金利上昇に対して、日本では長期金利(10年国債利回り)をゼロ近辺に抑え込んでいるための円安加速ともなります。

 もちろん「遅ればせながら」機関投資家の外貨資産購入や外貨ヘッジ売りの買戻しも入っているはずで、ますます円安にブレーキがかからないことになります。

 トランプの経済政策は明らかに「米国だけを優先する経済拡大策」であり「日本も優先」してくれることは絶対にありません。つまり日本経済が拡大するわけではなく、もちろん実質賃金が上昇するわけではなく消費不況は続くことになります。

 そこに米国から物価上昇期待だけが輸入されて国内製品価格の便乗値上げが加わり、実際に世界的に原油価格など商品価格が上昇し(世界経済の本格的回復を反映しているわけではなく世界的に物価上昇予想だけが膨らむ結果ですが)、日本だけが長期金利をゼロ近辺に抑え込んだままであるため、さらに円安が加速していくことになります。

 そうすると起こりうることは1つしかなく、まさに黒田総裁が4年間言い続けた「2%の物価上昇」が輸入資源高・円安・便乗値上げなどによる典型的な「悪い物価上昇」の形で実現してしまい、ますます消費不況を加速させてしまうことになります。

 確かに円安加速で大企業の業績は上向きますが、それが前向きの設備投資や雇用拡大や賃上げを通じて消費拡大に結びつくわけではないことは、前回の円安で十分に見てきた通りです。それが急に変化することはありません。

 つまりここからはストレートに円安=物価上昇になると考えておくべきです。それが株価上昇を持続させるかどうかは、少し慎重に考えてみるべきです。