ECB、FRB、日銀、年内最後のそれぞれの金融政策  その3

 日銀は本日(12月20日)まで開催されていた政策決定会合で、現行の長短金利操作付き・量的質的金融緩和(と呼んでいます)の据え置きを賛成多数(7:2)で決めました。いつもと同じですが反対は証券界出身の佐藤・木内両委員だけでした。

 現行の短期金利はマイナス0.1%、長期金利(10年国債利回り)はゼロ%という金利操作目標と、年間80兆円ほど日銀保有国債残高を増加させる国債買入れペースを維持することになります。

 また依然として物価水準が安定的に2%を上回ることが金融政策の目標であるとも繰り返しています。

 つまり日銀は全く何も変わらなかったことになります。米大統領選後は世界的に経済や金融市場を取り巻く心理状況が大きく変化している(はずの)なかで、日銀は何の変化も必要ないと判断したことになります。

 12月に入ってすでにECBが量的緩和を縮小し、FRBが1年ぶりの利上げに踏み切り、来年も継続的に利上げすると強く示唆する中で、日銀は何も変わらなかったわけです。

 また日銀は本日、海外経済・輸出・生産・個人消費などの持ち直しを背景に「景気判断」を「緩やかな回復基調を続けている」と上方修正しました。といっても頭についていた「基調として」を外しただけです。

 その一方で物価の判断は据え置きました。消費者物価(生鮮食品を除く全国消費者物価の前年同月比)の先行きを「当面小幅のマイナスないしゼロ%程度で推移する」としています。確かに直近(10月)の同消費者物価指数は前年同月比マイナス0.4%で、8か月連続でマイナスとなっていますが、これは米大統領選前の数字です。

 つまり景気についてはトランプ効果を早くも取り入れて海外要因を中心に「緩やかに回復している」としておきながら、大統領選挙前の10月の物価水準をもとに「当面の物価は小幅マイナスないしゼロ」と見通しを据え置き、従来の(円高・株安懸念の強かった時期の)金融政策をすべて継続させてしまったことになります。

 つまり国内経済や雇用状況(とくに実質賃金)が全く改善しない中で、物価だけが円安や資源高といった海外要因で上昇してしまい、黒田総裁が就任以来繰り返している2%の物価上昇目標が「典型的な悪い物価上昇」で実現してしまう恐れが強まったと考えます。

 ここでいう「悪い物価上昇」とは物価上昇の恩恵が国内ではなく海外に及ぶことで、足元の円安と原油など資源価格上昇による物価上昇が典型的な「悪い物価上昇」となります。

 12月に入ってからECBでもFRBでも金融政策変更とともに市場に的確な(少なくとも市場の注意を喚起する)メッセージを送っている中で、トリとして登場した日銀が少なくとも物価上昇に対する何の予防措置も講じていないことになります。

 決定会合後の記者会見で黒田総裁は、ゼロ%近辺といっても10年国債利回りに具体的な誘導レンジが設定されているわけではないと強調していましたが、先日10年国債利回りが一瞬0.1%となった時に慌てて長期ゾーンの買入れ額拡大を発表しており、その上限が0.1%であると考えておいてよさそうです。
 
 この国債利回りとはもちろん名目利回りであり、仮に黒田総裁の言う2%の物価上昇が実現してしまったら、10年国債利回りも2%とならなければ実質利回りがマイナスとなってしまいます。

 マイナス金利導入後の本年2月~10月の10年国債利回りはマイナスでしたが、これも名目利回りがマイナスだっただけで、物価上昇もマイナスであれば「それほど大きな問題」ではありません。
 
 ところがここから円安・資源価格高により物価上昇傾向がはっきりしてしまうと、それでも10年国債利回りが0.1%をこえないように日銀が国債買入れ額を増加することになります。つまり追加量的緩和となってしまいます。

 そうなると追加量的緩和・円安加速・悪い物価上昇・上昇する国債利回りを食い止めるためのさらなる追加量的緩和・さらなる円安加速・さらなる悪い物価上昇、と悪夢のスパイラルが続くことになります。

 さらに悪い物価上昇・実質賃金の大幅低下・消費低迷・不況(とくに雇用情勢のさらなる悪化)・実質賃金のさらなる低下・さらなる消費低迷、といったもう1つの悪夢のスパイラルも同時並行で続くことになります。

 「そんなこと何も考えていないのだろうなあ?」と心配になった本日の日銀政策決定会合でした。