トランプ大統領就任 ここからの「重要人物」とは(臨時版)

 2017年1月20日正午(日本時間21日午前2時)、ドナルド・トランプが宣誓を行い正式に第45代・米国大統領に就任しました。

 その瞬間に、米国の行政(外交や軍事を含む)最高責任者が交替したわけです。

 直後の就任演説では「今回の政権交代はワシントンから皆さんに権力を移すものになる」と語り、さらに「米国を再建する」と訴え、改めて「米国第一主義」を強調しました。

 さて米国では、大統領の行政権限と、国民を代表する(とされる)連邦議会立法権限が明確に分離されています。

 つまりここからは、従来の「トランプ政権の方針は?」といった議論は米国全体からみれば行政権の問題に過ぎなくなり、米国全体の方向性については連邦議会立法権との兼ね合い・権限の違い・力関係などを理解したうえで判断しなければなりません。

 米国大統領には議案提出権がなく、トランプ大統領だけで米国全体を動かせるわけではありません。

 それでは連邦議会の最重要人物は誰なのか?と言えば、ポール・ライアン下院議長となります。

 米国では上院と下院の関係は日本の衆議院参議院の関係とはかなり違います。例えば連邦議会には日本の衆議院のような先議権はなく、どちらから審議しても同時に審議しても構いません。また法案を小委員会・委員会で先に審議してから本会議に諮りますが、その過程における議長の権限は日本の国会運営とは比べ物にならないほど強力です。 

 

 それでは何で上院議長ではなく下院議長が最重要人物なのか?といえば、憲法上の上院議長は副大統領であり、実際は大統領も副大統領も連邦議員ではないため普段は議場にも入れず、副大統領は上院の議決が同数になった時に「最後の1票」を行使できるだけだからです。

 上院における通常の議長権限は上院仮議長に属すると考えられますが、このポストは完全に名誉職で最年長上院議員が任命されます。つまり上院仮議長は実際に議長席に座ることも議会運営に采配を振るうこともなく、議場では新米上院議員が交替で議長を務めます。つまり上院には下院議長に相当する権限を有する議員がいません。

 また実際に大統領に不測の事態があったときの継承順位は、副大統領、下院議長、上院仮議長、国務長官、財務長官、国防長官、司法長官と続き、政権に属さない下院議長が高順位を占めています。

 それでは同じく1月20日にスタートする第115議会(~2019年1月)の下院議長となるポール・ライアンとはどういう人物なのでしょう?

 2012年の大統領選挙では、共和党のミット・ロムニー候補と組んだ副大統領候補でしたがオバマに敗れ、2015年10月に辞任したベイナー下院議長の後任となりました。

 2016年の大統領選挙には出馬しませんでしたが、将来の大統領職には野心満々の46歳です。またポール・ライアンは、年齢や身長や育ちだけでなく、生活スタイルや主義主張など何から何までドナルド・トランプとは対極の人物です。

 政策については共和党員の共通点である減税・規制緩和・小さな政府などを標榜していますが、筋金入りの金本位制復帰論者でもあります。金本位制には何の規制もいらないからです。

 今回の大統領選挙でも最後までトランプ支持を表明せず、トランプの共和党候補選出が確定的となった2016年6月にやっと「(大統領選では)トランプに投票する」と表明しただけでした。

 ライアンは議会運営のプロで政策通でもあるため、トランプは好むと好まざるに関わらずライアンと協力関係を保たなければなりません。またトランプが突然言いだした「輸出は免税・輸入は経費算入させず」も、ほとんどライアンのアイデアのような気がします。

 つまりトランプ大統領が正式に就任したあとは、トランプ政権だけを見ていては「対極を見誤る」ことになりそうです。