予定通り利上げしたFRB、変更なしの日銀

 3月15日まで開催されていたFOMCは、日本時間本日(3月16日)未明に予想通り政策金利(FF翌日物誘導金利)を0.50~0.75%から0.75~1.0%へ引き上げました。

 また本日まで開催されていた日銀の政策決定会合では、これも予想通りすべて現状維持となりました。政策金利をマイナス0.1%(といっても日銀当座預金のほんの一部に適用されるだけのマイナス金利ですが)、10年国債利回りをゼロ近辺に維持し、同じく日銀の保有国債残高を年間80兆円、ETFを年間6兆円純増させることになります。

 FOMC後のイエレン議長の記者会見からは、FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は1月に前年同月比1.9%上昇してFRBの物価中期目標である2%に近づいていますが、ここからの物価上昇加速についてはほとんど懸念していないことがわかります。

 これは3月9日のECB理事会後におけるドラギ総裁の会見と似ており、米欧の中央銀行は当面の物価上昇加速を懸念していないことになり、今後の相場判断において重要なポイントとなります。

 今回のFOMCでは、本年の利上げは3回(つまりあと2回)、2018~2019年も年3回ずつとの従来の見通しを据え置いたため、結果発表直後の為替市場は1ドル=114.50円から113.40円まで、1ユーロ=1.063ドルから1.073ドルまで、それぞれドル安となりました。

 また米国10年国債利回りも2.6%から2.52%まで低下したため、それだけ長短金利差が縮小したことになります。

 今回公表されたドットチャートでは、2018年末における政策金利(FF翌日物誘導金利)が2.00~2.25%、2019年末では2.75~3.0%となっており、景気見通しでは2017年と2018年の経済成長はともに実質2.1%と前回予想(2016年12月)と変わらず、物価上昇率は2018年に2.0%に到達すると予想されています。

 この物価上昇率とは個人消費支出(PCE)物価上昇率の対前年同月比のことで本年1月はすでに1.9%上昇していますが、FRBはここから物価がほとんど上昇しないと予想しているわけではなく、中期目標である年2%の上昇ペースに落ち着くと予想していることになります。

 つまりFRBは、2018年には米国経済の実質成長率、物価上昇率政策金利が「概ね2%に収斂する」と予想していることになります。

 つまり名目経済成長率は4%となり、これは長期金利(10年国債利回り)にも収斂するはずです。そうすると同時に経済成長率に収斂するはずの長短金利差も2%となり、辻褄は合っています。

 あまりにも整然とした(教科書通りの)予想ではありますが、中央銀行として市場に大雑把な「経済成長・物価・長短金利シナリオ」を掲げておく意味は確かにあります。

 翻って日銀のシナリオはどうなのでしょう。日銀は黒田総裁が2013年4月に「異次元」量的緩和に踏み切って以来、経済成長目標は掲げず「2%の物価上昇」だけを目標としています。

 そして現在の長短金利シナリオは、政策金利短期金利)をマイナス0.1%、長期金利(10年国債利回り)をゼロ近辺としていますが、実際的には短期金利がマイナス0.1%~プラス0.1%、長期金利(10年国債利回り)が0.0~0.1%となります。

 つまり日銀のシナリオでは、物価上昇目標が2%でありながら長期金利(10年国債利回り)がゼロ近辺であるため名目経済成長率もゼロ近辺に収斂することになり、さらに経済成長率に収斂するはずの長短金利差もゼロとなります。

 つまりこのまま2%の物価上昇が実現してしまうと、名目成長率はゼロのままであるため、実質成長率はマイナス2%になってしまいます。

 それが日銀の「経済成長・物価・長短金利シナリオ」なのです。

 黒田総裁の就任以来、「異次元」量的緩和(2013年4月)・追加量的緩和(2014年10月)・マイナス金利導入(2016年2月)・長短金利誘導(2016年9月)と、安直な金融政策を重ね合わせてきた結果、このような矛盾するシナリオになってしまいました。

 正しい処方箋は、一刻も早く量的緩和ペースを半減させて日銀の国債保有残高の純増額を年間40兆円とし、マイナス金利を止めて政策金利短期金利)をゼロとし、長期金利(10年国債利回り)の誘導をやめて市場実勢に委ねることであるはずです。