過大評価されている不思議な国・フランスの大統領選挙

 表題は2015年にメルマガ・闇株新聞 プレミアムで長期連載した「歴史上で常に過大評価されている不思議で厚かましい国・フランスの歴史」からとりました。

 ナポレオン時代を除いて戦争に強いわけではなく、ポルトガル・スペインのように大航海時代をリードしたわけでもなく、英国にように奴隷貿易で蓄積した富で産業革命を成功させたわけでもなく、第二次世界大戦では開戦直後にヒトラーにパリを陥落させられ傀儡政権となったフランスですが、いつの間にかちゃっかりと「いい位置」を確保している不思議で厚かましい国がフランスです。

 そのフランスで大統領選挙が行われます。4月23日の第1回投票で過半数を獲得する候補がいなければ(そうなるはずです)、5月7日に上位2候補の間で第2回投票が行われ新大統領が決定します。

 現在のフランスもEUやIMFなど国際機関、それにアフリカ・中東・インドシナなど広大な旧植民地地域に「国の実力をこえた地位」を確保している不思議で厚かましい国であるため、その大統領も「実力をこえた世界への影響力」を備えることになります。

 前回の大統領選挙(2012年)から、各政党は一般有権者も含めた投票で候補者を選ぶ予備選を取り入れており、各政党とも多数の候補者が乱立した結果、社会党では現職のオランド大統領、共和党ではサルコジ前大統領があえなく「落選」してしまいました。

 政治における右派・左派とは万国共通の政治用語ですが、もとはといえば1789年のフランス革命時の国民議会で、議長席から見て右側に王党派、左側に急進革命派が座っていたことに由来します。

 そして今回の大統領選挙でも、その元祖・急進左派から極右まで有力候補者が「きれいに」出そろいました。左から並べると急進左派のメランション、中道左派で「与党」社会党のアモン、中道独立系のマクロン、中道右派共和党のフィヨン、そして極右・国民戦線(FN)のルペンとなります。

 このなかでは反移民・反EUを掲げる国民戦線(FN)党首のマリーヌ・ルペンと、昨年8月までオランド現政権のバルス内閣で経済担当大臣を務めていたエマニュエル・マクロンがリードしていましたが、ここにきて両者とも息切れしています。

 代わって急進左派で反EUだけではなく反NATOまで掲げるジャン=リュック・メランションと、妻への不正給与疑惑で出遅れていた前首相(サルコジ政権時)のフランソワ・フィヨンが盛り返しており、「与党」社会党候補のアモン以外の4候補すべてに第1回投票で上位2位に残る可能性があります。

 それでも現時点ではまだルペンとマクロンがリードしており、そのまま第1回投票でルペンとマクロンが残れば、第2回投票で反ルペンが集結してマクロンが新大統領になるとの予想が支配的です。それではこのマクロンとは何者なのでしょう?

 マクロンはまだ39歳で、国立行政学院(ENA)出身の「典型的エリート」です。2006年に社会党に入党し、2008年にロスチャイルド系の投資銀行入りし、2012年にオランド政権になると大統領府副事務総長となります。そして2014年には早くも経済担当大臣に抜擢され、2016年8月に大統領選出馬のために辞任しています。

 経済担当大臣時代には、フランス政府が大株主であるルノーによる日産自動車の完全子会化を主張していました。政治信条そのものは右派でも左派でもなく、状況に応じて右派と左派の主張から「いいとこ取り」する「戦略のための中道派」のような気がします。

 2016年4月に政治グループ「前進!(En Marche!)」を結成していますが、まさに「右派でも左派でもない政治」をスローガンにしています。

 フランスでは大統領選直後の6月に総選挙(国民議会選挙)が行われますが、仮にマクロンが大統領となってもそれだけでは直接支える政党がありません。そこで総選挙で「前進!」が中道右派共和党)と中道左派社会党)の既存政党から議員候補を寄せ集めて過半数を確保するつもりのようですが、いくらなんでもムシが良すぎます。

 そうなると中道右派共和党)か中道左派社会党)のどちらかと連立政権を組むことになりますが、そうなるとマクロンの政治は大きく制限され「右派でも左派でもなく前進もできない政治」となってしまいそうです。つまりマクロンはあまりにも「促成栽培」で「脆い大統領候補」となります。

 それではルペンはどうなのでしょう?ここにきて(息切れが目立つようになってから)再び反移民・反EUという「国民戦線(FN)本来の主張」に回帰しているようです。現地時間・昨日(4月20日)夜にパリのシャンゼリゼであった銃撃テロも、微妙にフォローに働くかもしれません。

 つまり現時点の本誌の「直前情報」は、少なくともマクロンは大本命ではなく、少なくともルペンは大統領になれないわけではないとなります。