「バフェット」と「バフェットでないもの」の違い

 本日(5月9日)の日本経済新聞夕刊の記事(4面のウォール街ラウンドアップ)を見て、思わず予定を変更して書いた記事です。

 記事そのものが間違っているわけではありませんが、まさに「バフェット」と「バフェットでないもの」の違いに注意しなければならないと言いたくなる内容です。

 まずその記事に入る前の「前段」です。

 先週末の5月6日、ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイの定時株主総会が、本社のあるネブラスカ州オマハで開催されました。人口43万人のオマハに、毎年4万人ほどの株主が訪れるそうです。

 バフェット氏は今年の株主総会で、保有するアップルをさらに評価する発言を繰り返したため、週明け8日のアップル株はさらに上昇して153ドルとなり、時価総額が初の8000億ドル(90兆円)となりました。

 バフェット氏は昨年(2016年)3月にアップル株に初めて投資し、昨年末にかけて買い増していましたが、本年1月末の決算発表前に7000万株以上を大量取得し(その時点の株価は121ドル)、合計1億3300万株を保有しています。バフェット氏の保有するアップル株式の時価総額も200億ドルをこえたことになります。

 またバフェット氏は総会で、今年になって保有株式の3分の1を売却したIBMについては「投資した2011年当時はうまくいくと思ったが間違いだった」と認め、逆に昨年後半から大量に投資している航空株については「もう経営悪化につながる価格競争に陥ることはないだろう」と擁護しています。

 バフェット氏は1965年にバークシャー・ハサウェイの経営権を取得して以来、現在までにその株価を約2万倍にしています。その間のS&P500は150倍程度のはずです。

 昨年から投資しているアップル株がさらに上昇しているなどの「無数にある成功例」や、IBMのような「たまにある失敗例」について、今さらコメントするつもりは全くありません。バフェット氏の投資は、成功例も失敗例も「見ているだけで勉強になる」からです。

 さてここからが本題です。表題の「バフェット」と「バフェットでないもの」の違いとは、単に運用実績が神様のようなバフェット氏と、投資実績が凡庸な担当者の違いではありません。

 その日経新聞で紹介されている「バフェットでないもの」とは、バフェット氏がアップル株に投資したら実際に株価が上昇したことを見て「アップルと同じような企業がある」とか、バフェット氏が珍しくアマゾン株に投資しなかったことを悔やんでいることを聞いて「アマゾンはまだまだ上がる」など根拠不明の理屈で投資資金を募っている新興ヘッジファンド担当者のことです。

 明らかにバフェット氏の威を借る狐のような輩(やから)がいるわけですが、実際にそう聞いてしまうと「バフェット氏のバークシャー・ハサウェイはもう株価が2万倍になっているので、バフェット氏のような投資手法なら(ここが間違い!)資金を預けてみようか」と考えてしまう投資家が世界中に結構いるものです。

 だいたい悲惨な運用実績になってしまいます。

 もともとバフェット氏は、投資家から高率の手数料や成功報酬を受け取るヘッジファンドを強く批判しています。そして総会でもタダみたいな運用手数料でリーマンショック以降すべての年でヘッジファンドの平均実績を上回るインデックスファンドを広めたバンガードを称賛したようです。

 さて本日の記事は、近々「ビットコインビットコインでないものの違い」という記事を書こうとしていたところに本日の記事を見たため、ついバフェット氏に変更してしまったものです。

 本誌はビットコインを含む仮想通貨については懐疑的ですが、直近で1700ドル台と史上最高値を更新中のビットコイン価格については需給関係を反映したものであり、別に幻想とも詐欺話とも思っていません。

 ところが最近ビットコイン価格の急上昇を見て「数年前にビットコインに投資していたら今頃は大富豪でしたよね。ところがこのコイン(何とかコイン)はこれから売り出すため、いま投資しておけばあなたも大富豪ですよ」という詐欺話が日本で頻発しています。

 これはビットコインの価格変動を見て利用しているだけの単なる詐欺話で、絶対に信用してはいけません。だいたいバフェット氏とビットコインを比較すること自体、大変にバフェット氏に失礼ですが、ついこういう記事になりました。