日本郵政と野村不動産

 やや時間がたってしまいましたが先々週末(5月12日)の夕方遅く、日本郵政野村不動産ホールディングス(以下、野村不動産)を買収する検討に入ったと、主要メディアが一斉に報じました。

 本誌はその週明けの5月15日にメルマガ「闇株新聞 プレミアム」で取り上げていましたが、最新状況も加えて解説します。

 日本郵政は2015年に6200億円で買収したオーストラリアの物流会社が、早くも4000億円の減損処理となり、2017年3月期決算は民営後初めてとなる289億円の純損失となりました。

 これは「何でそんな高値で買収したのか?」より以前の問題として、典型的な官製国策会社であり日本国民のために良質なサービスを提供することが(無理ですが)義務であるはずの日本郵政が、何でわざわざ日本国民に全くメリットのないオーストラリアの物流会社などを買収したのかは、もう永久に理解不能です。

 この問題の買収は当時の西室社長が主導されたもので、また西室氏は2005年まで東芝の会長でもありウェスティングハウス買収も主導されていたはずで、どうも海外の問題企業を高値で買収することがお好きなようです。

 そこで7月にも予定されている日本郵政株の追加売り出しを、国民のために少しでも有利に進めるために「必死で考えた結果」が野村不動産の買収であるなら、まだわからないでもありませんが、もちろん違います。

 日本郵政の社長は西室氏が2016年3月に病気で退任したため、ゆうちょ銀行社長だった長門正貢氏が「タナぼた」で昇格していました。長門氏は日本興業銀行の出身ですが、2006年に富士重工副社長に転出していた「傍系」です。

 そこで長門社長は何とか巨額損失の火の粉が降りかからないよう画策し、さらにそれすら利用して総務省出身の高橋亨日本郵便会長の代表権をはく奪し、(あまり巨額損失と関係のない)石井雅美・かんぽ生命社長らを解任し、しっかりと焼け太ってしまいました。

 野村不動産の買収も、そんな流れの中で出てきたはずです。野村不動産は1957年に野村證券から分離・独立したマンション分譲事業、戸建て分譲事業、法人仲介事業、投資・開発事業を手掛ける不動産会社で、2006年10月に東証1部に上場しています。

 また2017年3月期決算は、売り上げが5696億円、営業利益が772億円、純利益が470億円となかなか好調でした。また日本郵便による買収のニュースが流れる直前の5月12日終値は2028円で、そこで計算した予想ベースのPERは8.8倍、PBRは0.8倍、配当利回りが3.45%と、確かに買収対象とすれば申し分ありません。

 しかし野村不動産とすれば、わざわざ買収される必要は全くありません。ましてやその相手が官製国策会社の日本郵政となれば社風も価値観も全く違い、せっかくの営業力が大きく削がれてしまうためプラスがありません。

 そこで問題の5月12日夕方遅くの報道ですが、これは日本郵政側のリークだったはずです。一般的には報道機関が流すニュースは会社側の正式発表ではないため、インサイダー情報とはなりません。その代わりに報道された会社は「本日の一部報道について」とのIRで「当社が決定したものではない」と公表するもので、確かに日本郵政は当日夜遅くIRしていますが、野村不動産は本日に至るまで無視したままです。

 たぶん日本郵政野村不動産に買収を持ち掛けたものの、ほとんど相手にされていなかったと考えます。そこで買収を既成事実化するためのリークだったはずです。

 さらに野村不動産の株式は、野村證券グループが3分の1超を保有しています。これは野村證券グループさえ説得すれば経営の主導権を握れるため、7月の日本郵政株の追加売り出しに際して主幹事の座を提供すれば(拒否すれば平幹事にも入れない)、何とかなるだろうということなのでしょう。

 本日(5月23日)の野村不動産の株価は2430円と、5月12日の終値(2028円)から2割近く高止まったままです。ただここのところ新しいニュースが全く出てこず、依然として何の進展もないようです。

 要するに日本郵政による典型的な「勝手買収」であり、普通であればそのまま立ち消えになりますが、そこは強大な官製国策会社の日本郵政であるため、「あっと」驚くような結果となるかもしれません。

 まあ野村證券グループなど野村不動産の株主も、日本郵政がお得意の「高値掴み」をしてくれるなら、それはそれで「あり」なのかもしれませんね。