米国のハイテク株急落はあまり心配する必要はない、しかし、

 先週末(6月9日)の米国株式市場は、ここのところの相場上昇を主導していたハイテク株が軒並み下落しました。ハイテク株の比率が高いNASDAQ総合指数は、その前日の8日の史上最高値となった6321ポイントから1.8%下落して6207ポイントとなりました。

 しかし金融株やエネルギー株が上昇したため、NYダウは逆に上昇して21271ドルと史上最高値を更新しています。金融株については米議会でボルカー・ルールを含むドット・フランク法撤廃が進展しており、金融機関の規制緩和が一層進むと期待されたからです。

 このハイテク株急落の直接のきっかけは、新型スマートフォンのスペックが期待されたほどではなかったアップルが急落したからで、アップルの時価総額はたった1日で300億ドル(3.3兆円、3.88%)も減ってしまいました。

 時価総額がアップルに続くアルファベット(グーグル)、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックも合わせた時価総額上位5社合計では、900億ドル(10兆円)以上も減少しています。しかしこの5社の時価総額合計は、まだ昨年末を5700億ドル(62兆円)も上回っており、ほんの少し調整しただけです。

 また日本にも登場した空売りファンドのシトロン・リサーチが売り推奨レポートを出したエヌビディアが6.5%、ネットフリックスも5%近い下落となりました。エヌビディアはソフトバンクがビジョンファンドでの投資用としてすでに40億ドル(4500億円)を手当てしているはずで、以前から懸念されている利益相反の問題がさっそく出てきそうです。

 これを受けた本日(6月12日)の東京市場では、そのソフトバンクが2.6%安、東京エレクトロンが3.0%安、キーエンスが2.2%安となりましたが、日経平均は104円安(0.5%安)の19908円と小幅の下げで終わりました。

 さてこのハイテク株急落はどう考えればいいのでしょう?結論だけ言えば、それほど心配する必要はありません。

 結局のところ米国の(日本でも)株式市場で買われ過ぎていたハイテク株のスピード調整であり、株式市場全体が急落する兆候はまだ見当たらないからです。米国に限らず(日本を含む)世界の株式市場にとって、経済の低迷や政治の混乱はマイナス材料ではなく、また最近はイベント(突発的悪材料)による混乱も短期的ですぐに株価は大きく回復しています。

 リーマンショック以降の世界的な金融緩和・量的緩和の効果がようやく本格的に株式市場に出ているからで、その変化が簡単に終わってしまうことはないからです。

 仮に買われ過ぎていたハイテク株が一時的に調整するとしても、金融株、エネルギー株、消費関連株などが代わって株式市場を主導していくかというと、再びハイテク株に戻ってくると考える方が自然です。

 昨年に中国人民元急落や英国EU離脱決定などで、あれだけ急激な調整に見舞われた世界の株式市場が、相変わらず中国経済が不安定で英国のEU離脱がますます混沌としているにもかかわらず「ほとんど」気にもしなくなっています。

 それと同じで1~2回、ハイテク株の急落にヒヤリとさせられても、すぐに「次に急落したら買いチャンス」と考えるようになるはずです。

 ただハイテク株だけではなく米国株式市場で1つだけ「近い将来」の懸念材料があるとすれば、それはFRBの金融政策がより「引き締め」に向かうケースです。

 米国経済でも好調な企業業績にもかかわらず賃金が伸び悩み、消費が低迷して経済全体(GDP)の成長が鈍化し始めています。この状態は日本経済が「先輩」ですが、米国はGDPに占める消費の割合が68%と日本の56%より高いため、その影響は日本よりも深刻です。

 そこへFRBが一見好調な雇用統計だけを見て利上げを重ねたり(今週のFOMCでの利上げは確定的です)、FRB保有資産の縮小に早期に取り掛かったりすると、消費が伸び悩んで「急激に日本経済化」している米国経済にさらに急激なブレーキをかけてしまう恐れがあります。そうなるとさすがに米国株式市場にも影響が出るはずです。

 これもすぐに「そうなる」というわけではありませんが(今週の利上げは完全に織り込んでいるためショックはありません)、本年後半にかけては気にしておく必要があります。

 来年2月に任期が切れるイエレン議長が再任される可能性は低く、また3名も空席のあるFRB理事の人選もこれからで(トランプ大統領が指名して上院が承認します)、FRBの現体制とすれば「金利は上げられるうちに目いっぱい上げて、FRB保有資産縮小もできるだけ早くスタートしておこう」と考えてもおかしくないからです。