利上げに加えて保有資産圧縮にまで踏み込んだFRB

 FRBは6月14日まで開催されていたFOMCで本年2回目の利上げを決定し、政策金利のFF翌日物誘導金利を0.25%引き上げて1.00~1.25%としました。

 同時に発表されたFOMCメンバー(投票権のないメンバーも含む)16名の本年末までの予想では、もう利上げなしが4名、あと1回が8名、2回が4名となっています。

 また2018年末までの1年半の予想では、16名の平均値があと4回の利上げとなっていますが、その内訳はゼロ回から8回まで見事にばらついています。

 ちなみにこのゼロ回と予想したメンバーは、たぶんミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁で、今回のFOMCでもただ一人利上げに反対票を投じています。カシュカリ氏はゴールドマン・サックス出身で、リーマンショック時は財務次官補として問題債権購入計画(TARP)の運営責任者も務めている典型的な「回転ドア(注)」ですが、市場に対する嗅覚は優れているはずです。

(注)民間ポストと公的ポストの間を「回転ドア」のように行き来しながらキャリアアップを図る野心家のこと

 今回のFOMCでより重要なことは、FRB保有資産圧縮を「年内に着手する」と公表していることで、これまでよりやや前倒しで具体化することになりそうです。

 またその具体的方法も初めて公表しており、4.5兆ドルに膨らんだFRB保有資産の償還分の再投資を圧縮することにより、最初の3か月は毎月米国債の60億ドルとMBS住宅ローン担保証券)の40億ドルを上限に圧縮し、以後3か月毎に上限を合計100億ドルずつ引き上げ、1年後には毎月米国債の300億ドルとMBSの200億ドルを上限に圧縮するようです。

 つまり圧縮開始から1年後には米国債MBSを合計で年間6000億ドルのペースで圧縮することになります。しかしFRB保有資産の償還額は年間4~5000億ドルのはずで、その時点では償還分の再投資を見送るだけでは足りず、保有債券を市場に売却する必要が出てくるはずです。

 本誌は以前から、FRBが金融政策を引き締めすぎて米国経済にブレーキを掛けてしまう事態を懸念しており、とりわけFRB保有資産圧縮を急ぎ過ぎることが米国株式に対する「唯一のマイナス材料」と考えています。

 米国株式に限らず世界の株式市場は、実体経済が伸び悩んでも政治が混乱しても上昇を続けていますが、それを支える最大の要因が世界的な金融緩和とりわけ量的緩和であるはずです。

 FRBは資産の新規購入を2014年10月に打ち切っていますが、現在に至るまで保有資産が償還になると再投資して4.5兆ドルの総資産残高を維持しています。リーマンショック直前のFRB総資産は9000億ドルほどで、米国は今でも未曽有の量的緩和を継続していることになります。

 それがリーマンショック以降はじめて縮小に向かうことになり、そのショックとりわけ株式市場に与えるショックを明らかに「軽視」していると考えます。

 イエレン議長をはじめ(カシュカリを除いて)学者が多いFOMCメンバーは、足元の失業率が4.3%と「完全雇用状態」に達し雇用数も順調に伸びているところだけを見て、利上げ継続だけでなくFRB保有資産圧縮まで「前倒しで」踏み込んでしまうようです。

 ところが足元の米国経済は、雇用情勢が逼迫していても一向に賃金が上がらず、したがって消費が伸び悩んで経済成長の足を引っ張るという「日本経済化」が急激に進んでいると感じます。

 GDPに占める消費の割合は米国が68%と、日本の56%より高いため、その影響はもっと大きいはずです。日本では2014年4月の消費増税で経済回復を潰してしまったように、米国では早すぎるFRB保有資産圧縮が実体経済だけでなく今度は株式市場まで停滞させてしまう恐れがあります。

 FOMC当日のNYダウは、利上げ=金融機関の業績改善と安直に反応して史上最高値を更新していますが、すぐではないもののFRBの再投資縮小で需給関係が悪化するはずの米国債市場では10年国債利回りが2.13%まで低下しています。

 米国債市場は需給悪化より実体経済の低迷を予想していることになり、株式市場の反応と違っています。またあまり関係がないかもしれませんがビットコインは前日の2800ドルから2300ドルまで急落しています。

 この辺は目先だけでなく向こう1~2年の世界の金融市場にとって大変に重要なところと考えます。また本日(6月16日)は日銀政策決定会合もあるため、あわせて来週月曜日に配信するメルマガ「闇株新聞 プレミアム」でじっくり解説します。