今後の中東情勢を巡る5つのポイント

 最近また中東情勢が混沌としていますが、今後を考える際に重要と思われる5つのポイントを挙げておきます。

 まずサウジアラビアのサルマン国王は6月21日、甥で王位継承順位第1位のムハンマド・ビン・ナエフ内相兼皇太子を解任し、息子で31歳のムハンマド・ビン・サルマン国防相兼副皇太子を皇太子に昇格させました。順調にいけば次の国王となります。

 2016年9月6日付け「2人のムハンマド」にも書いてありますが、このムハンマド皇太子は副皇太子時代から国防、経済政策、外交を国王に代わって取り仕切っており、今後はますます権限が集中することになります。

 そしてこのムハンマド皇太子は「対イラン強硬派」であり、サウジアラビアは今後ますますイランとの対立を深めていくことになります。これが最初のポイントとなります。

 そして自称イスラム国(ISIS)の最高指導者であるアブー・バクル・バグダディー容疑者が、先日ロシアの空爆で死亡したはずです。また6月21日には「首都」モスルにあるヌーリモスクが、イスラム国によって自ら爆破されてしまいました。

 このモスクは2014年7月にバクダディーがイスラム国の「独立」を宣言した場所であり、いよいよイスラム国の壊滅が近いと思われます。

 さすがに中東でもイスラム国を「支持」していた国はありませんが、いわば「共通の敵」が消滅することにより、中東の微妙なバランスが変わってしまう可能性があります。さしあたってはイスラム国の「領土」にシリア(アサドの政府軍と反政府勢力が別々に)、イラク、イラン(中東最強のイスラム革命防衛隊)などが入り込むはずで、そうでなくても不安定なこの地域の混乱がさらに拡大しそうです。これが2つ目のポイントとなります。

 ちなみにイスラム国の残党は消えてしまうわけではなく、すでに東トルキスタンに移動しているはずです。中国が弾圧している新疆ウイグル自治区のすぐそばで、またフィリピンのミンダナオ島にも入り込んでいるようで、「テロが東に移動する」ことになるはずです。

 そして依然としてよくわからないのがカタール情勢です。6月5日にサウジアラビア、エジプト、バーレーンUAE、イエメンの5か国がカタールとの国交を断絶し、後にリビア東部、モルディブも加わっています。

 カタールムスリム同胞団などテロ組織に資金支援しているからとされていますが、もっとストレートには「イランに近い」ことです。もともとカタールは石油、天然ガスなど地下資源に恵まれていますが、イランとの間のペルシャ湾に大天然ガス田があり、どうしてもイランに対しては強く出られません。

 これは最初のポイントである「対イラン強硬派」のムハンマド皇太子(当時は副皇太子)の意向が強く働いたはずですが、もともとカタールサウジアラビアなどと同じ親米湾岸諸国であり米軍基地もあります。そしてイランがさっそくカタールに食料支援をしており、今まで比較的平和であった湾岸諸国にも政治的緊張が増すことになります。これが3つ目のポイントとなります。

 そこで米国の中東政策ですが、もともとトランプ政権は親イスラエル、親サウジなど湾岸諸国、反イラン、反アサドで、5月下旬のトランプの初外遊もサウジ、イスラエルをまず訪問していました。

 ところがそのトランプが初外遊に出発する直前の5月17日に、ロシアゲート疑惑を解明するためにモラー特別検察官が任命されており、最大の親イスラエルであるクシュナー氏も捜査対象になってしまいました。

 その間隙をついて、あの超保守派のスティーブ・バノンがホワイトハウスで復活しているようです。そうするとトランプ政権における中東を含む外交方針が、サウジやイスラエルの訪問時から変わる可能性があります。より正確に言うとトランプ政権発足前後の超保守的な状態に戻る可能性があり、これが中東においても4つ目のポイントとなります。

 そして原油価格が下落しています。OPECが減産を続けても、サウジなどがカタールとの国交を断絶しても、トランプがパリ協定を脱退しても、WTI価格で1バレル=42ドル台に落ち込んでしまいました。

 つまり今後も原油価格は低迷を続け、サウジなど産油国経済に微妙な影を落とすはずで、これが5つ目のポイントとなります。

 まだポイントを羅列しただけですが、中東に新たな混乱が続きそうな予感は「たっぷり」しています。