オリンパス事件に新事実?

 オリンパス事件については新刊本を準備中であるため、発刊までは新しい記事を控えています。しかし本日発売の週刊エコノミスト(7月4日号)に「オリンパス事件・指南役・逮捕起訴の証拠に疑義」との記事が掲載され、また同誌のWeb版にさらに詳細が記載されているため、そこだけ新刊本に掲載予定の内容も含めて解説します。

 まずオリンパス事件とは、オリンパスの歴代社長を含む一部の幹部だけが、「指南役」とされる2組の外部関係者に主導されて損失隠し及びその解消を行い、有価証券報告書に虚偽を記載してしまったという「基本シナリオ」になっています。つまりオリンパスは首謀者ではなく、あくまでも脇役あるいは被害者に近いという「基本シナリオ」に沿って裁判も進められています。

 ここでオリンパス事件において重要な役割を果たすLGTリヒテンシュタイン銀行(以下、LGT銀行)も、当然に「基本シナリオ」に沿って「指南役」とされる横尾宣政氏がオリンパスに紹介したことにされています。ここはオリンパス事件の「基本シナリオ」の根幹にかかわる重要な部分ですが、裁判では横尾氏側の証拠申請がすべて却下されて「基本シナリオ」に沿った判決となっています(上告中)。

 ところが週間エコノミストが入手したオリンパスの内部資料には、オリンパスの下山会長(当時)と森副社長(当時)が、横尾氏が紹介したと認定されている時期より以前にリヒテンシュタインを直接訪問し、LGT銀行のオーナー家の王子と面会していた「事実」が詳細にわたって記載されています(同誌のWeb版から)。

 オリンパス事件では、2011年11月8日にオリンパスが過去からの損失先送りを公表し、森副社長(当時)が同日付けで解職されています。この週刊エコノミストが入手した内部資料とは、その3日後の11月11日にオリンパスの顧問弁護士事務所である森・濱田松本法律事務所と、その後任となるビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所(以下、ビンガム。現在はアンダーソン・毛利・友常法律事務所と統合)が合同で、その森氏から事情聴取した際の記録で、全部で50ページほどあるようです。

 週刊エコノミストは今後も、その内容を徐々に公開していくはずです。本誌も記録が残されていたことは初耳ですが、その事情聴取の内容は「ほとんど」把握しており、準備中の新刊本でもかなりのページを割いています。

 その重要部分だけをここでご紹介しておきます。これは決して週刊エコノミストを出し抜こうと考えているわけではなく、本誌のここまでの調査内容も一緒にお届けすることが、週間エコノミストの今後の記事にもプラスになると(勝手に)考えているからです。まあ本誌の新刊本がもっと早く完成していればよかっただけですが、次から次へと「新事実」が出てくるため、そのウラ取りに時間がかかっています。

 その前に、週間エコノミストオリンパスの内部文書と書いているので、この記録は物理的にオリンパス社内にあったはずです。ところがオリンパスにはその40日後の2011年12月21日に証券取引等監視委員会東京地検特捜部、警視庁捜査2課が合同で強制捜査に踏み込んでおり、その時点では当然に文書になっていたこの記録も押収したはずです。

 強制捜査で重要書類を見落とすことは絶対にありません。そうするとこれら捜査当局は「基本シナリオ」に反する証拠を押収しておきながら、見事に無視したことになります。

 さてこの森氏からの事情聴取は、森・濱田松本法律事務所の宮谷隆弁護士と、ビンガムの坂井秀行弁護士が約2時間かけて行ったもので、この時点での事情聴取は森氏からだけだったはずです。

 そしてその5日後の11月16日に、森・濱田松本法律事務所がオリンパスの顧問弁護士を辞任し、正式にビンガムの坂井弁護士が後任となっています。その顧問弁護士交代の理由は「信頼関係が失われたから」とされていますが、本当の理由はオリンパス事件となった過去の企業買収について2009年に第三者委員会が設置されており、調査結果は当然のように「何の問題もなし」でしたが、それに森・濱田松本法律事務所が深く関わっていたからです。

 それではビンガムの坂井弁護士が最も知りたかったところとは、オリンパスが過去の損失隠しを修正した場合、どこかで債務超過になっていないか?の1点だけだったはずです。

 つまりどこかで債務超過となっていれば違法配当など特別背任となり、さすがにオリンパス事件とはオリンパスの会社ぐるみの犯罪となってしまうからです。

 そして森氏からの事情聴取の結果は「セーフ」だったようで、そこで初めてオリンパス事件とはオリンパスの会社ぐるみではなく、2組の外部関係者である「指南役」に主導されたものであるという「基本シナリオ」が出てきたはずです。

 つまりそんなオリンパス事件の根幹にかかわる重要な内部文書が出てきてしまったことになり、週間エコノミストも「従来の捜査結果を覆しかねない新事実が浮かび上がる」と意気込んでおられます。

 経済事件は殺人事件とは違い、いくら新しい証拠が出てきても「基本シナリオ」が覆ることは難しいものですが、それでも本誌は「真実」を追い続け、発信し続けていきます。