どうして東芝はそんなに死に急ぐ?

 過激な表現を好まない本誌ですが、もはやこう表現するしかありません。またあまり東芝ばかり取り上げないようにするつもりですが、こう次から次へと「驚くべきニュース」が飛び出してくると、やはり取り上げざるを得なくなります。

 東芝は昨日(6月28日)、定期株主総会を開催しました。しかし2017年3月期の決算報告はなく、ただ現取締役陣の再任を承認しただけでした。さすがに再任された取締役陣の任期は、2017年3月期の決算報告を行う臨時株主総会までとなっています。一応は決算報告ができる日がくることを想定しているようです。

 さてこの定時株主総会に間に合わせるために、半導体事業会社売却の優先交渉権を6月21日に「日米韓連合」に与えていたはずですが、当然のように何の進展もありません。

 表面だけでも議決権の過半を維持していることにしたい産業革新機構など日本勢が、ベインキャピタルの出資分の大半を議決権のない優先株にしてもらったわけですが、当然にベインキャピタルは「とんでもない条件の普通株への転換条件」を求めているはずで、おいそれと合意できるはずがありません。優先交渉権を与えてしまったら足元を見てくることは当たり前です。

 またその優先交渉権で、半導体事業会社の分離・売却を差し止めているウエスタン・デジタル(以下、WD)が当然のように態度を硬化させ、最高価格(2兆2000億円)を提示していたブロードコム・シルバーレイク連合やKKRも当然のように降りてしまいました。

 さらに東芝は定時株主総会が終わった直後にWDが半導体事業会社の売却を妨害しているとして1200億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴してしまいました。ここでWDとは、曲がりなりにも東芝四日市工場を共同運営しており、建設中の第6製造棟も含めてそれなりの投資も行ってきた「仲間」であるはずです。

 つまり権利を主張している「仲間」に対し(その主張が正当なものかどうかはともかくとして)、今まで東芝には何の力にもなっておらず(これからも何の役にも立ちそうもない)産業革新機構のメンツとベインキャピタルのカネ儲けを優先するために、「仲間」を訴えたことになります。

 本誌は日本の事業を海外に簡単に売却することは常に反対していますが、これは全く「それ以前の信義に関わる問題」であるはずです。

 そもそも2018年3月までに債務超過を解消しなければ上場廃止になるというタイミングと、そこから逆算した2兆円という金額と、経済産業省産業革新機構のメンツと、パニックになっている銀行団を黙らせることを考えただけの優先交渉権となります。

 そこで依然として目途の立たない2017年3月期決算をどうするとか、「仲間」であるはずのWDをどうなだめるとか、そもそも半導体事業会社を売却することが最善の策であるのかなどの議論が、スッポリと抜け落ちたままになっています。

 さらに半導体事業会社の簿価が7000億円ということなので、仮に2兆円で売却できたとすると数千億円規模の税金を支払う必要があります。東芝の「試算」では2017年3月期において5816億円の債務超過だそうですが、企業会計税務会計は違うものなので「おそらく」売却益の全額が課税対象となるはずです。

 これなども最近になって「えっ、税金がかかるの?」と慌てているはずです。

 本誌が予想する半導体事業売却の最終形とは、WDがギリギリまで差し止めて最後にKKRを抱き込み、徹底的に買い叩いて(たぶん1兆数千億円くらいで)買収してしまうと考えます。

 世界最大級のプライベート・エクイティファンドであるKKRが出てくると、ベインキャピタルなど比べものにならないほど「えげつない」はずで、結局は何のために虎の子の半導体事業会社を海外に売却するのかわからなくなるはずです。

 話題が変わりますが、3月末に米連邦破産法の適用を申請したウェスティングハウス(以下、WH)も、結局は中国で止まっている4基の原発建設も含めた損失はすべて東芝にツケ回されるはずですが、破産後のWHは間違いなくピカピカの会社になります。さっそくインドでの6基の原発建設が復活しているようです。

 WHも3月末に連結対象から外すためだけに破産申請したものの、その3月末の決算も全く目途が立っていないため、いったい何のためにオール米国を敵に回してまでWHを破産申請したのかがわからなくなります。

 それに加えて今回は「仲間」であるはずのWD相手に訴訟しており(それも全く意味のない東京地裁に)、いよいよ表題にある「どうして東芝はそんなに死に急ぐ」となってしまいます。