北朝鮮を巡る最新の国際情勢はどうなっている?

 北朝鮮は7月4日午前、大陸間弾道ミサイルICBM)と思われる発射実験を行いました。高度2800kmまで上昇して日本の排他的経済水域に落下しており、発射角度を変更すれば6~7000km飛行可能で米国領(アラスカあたり)まで射程圏に入った可能性があります。

 ところで本年4~5月頃のドランプ大統領は、北朝鮮が核実験やミサイル実験を強行すれば軍事攻撃(金正恩斬首作戦)も辞さないと繰り返し強調し、4月6~7日の米中首脳会談でも習近平国家主席金正恩を抑えるように圧力をかけたとされています。

 そこからどう見ても習近平がその通りに行動しておらず、それどころか発射実験と同日にはロシアを訪れておりプーチン大統領と「北朝鮮が核・ミサイル開発を凍結するのと引き換えに米国が韓国と合同軍事演習を取りやめるべき」との共同声明を発表するなど、トランプは完全にコケにされています。

 「金正恩斬首作戦」を強行すると繰り返していた4~5月頃のトランプの勢いは、いったいどこへ行ってしまったのでしょう?

 その背景にあるのが米国の対中国政策が5月以降に「変化」していることです。もっと正確に言えばトランプ政権発足前後の状態に「戻っている」ことです。

 トランプ大統領は選挙中も当選直後も就任直後まで、徹底的に反中国を前面に打ち出していました。台湾総統と電話会談を行い、中国の為替管理国への指定も確実視されていましたが、これらはトランプ当選を金銭的にも戦術的にも支えた超保守派がホワイトハウスに送り込んだスティーブ・バノンが主導していたはずです。

 その超保守派の代表とは世界最強ヘッジファンドであるルネッサンス・テクノロジーズCEOのロバート・マーサーですが、この辺は2月23日付け「ケンブリッジ・アナリティカとは?」に詳しく書いてあります。

 ところがスティーブ・バノンのあまりにも超保守的な言動は徐々にホワイトハウス内でも疎まれるようになり、米中首脳会談のさなかにシリアをミサイル攻撃した4月6日ころには、完全にホワイトハウス外交政策の主導権をジャレッド・クシュナーなど側近に奪われていました。

 その影響でトランプ政権の対中国政策も「マイルド」なものとなり、中国と国境を接し関係の深い北朝鮮への対策も習近平に委ねた(米国は勝手に行動を起こさないことにした)はずです。

 ところがトランプ大統領が5月9日にコミーFBI長官を解任したあたりからロシアゲート疑惑の追及が強まり、5月17日にはロバート・モラー元FBI長官が特別検察官に指名され側近のジャレッド・クシュナーも捜査対象となり身動きが取れなくなってしまいました。

 ちょうどトランプ大統領がサウジアラビアイスラエルバチカンなどを初外遊していた5月下旬に再びハワイトハウスの勢力図が変わり、超保守派が押し込んだスティーブ・バノンが息を吹き返しました。そこで対中国政策が再び「強硬」に戻ったはずです。

 そこで6月29日に中国の(とりあえず北朝鮮との関係が深い)2法人・2個人を制裁対象に加え、6月30日に台湾への14億ドルの武器輸出を発表しています(オバマ政権時代にも台湾への武器輸出は行っていました)。

 そこから考えるとトランプ大統領は「北朝鮮に関しても中国を頼らない」となったはずです。それでは米国は独自に北朝鮮に再び圧力をかけて核・ミサイル開発を止めさせるのかというと、どうもそれほど単純でもなさそうです。

 ここからの米国の北朝鮮対策は、中国とロシアを両睨みにして考えなければなりません。もともとトランプ当選を金銭面・戦略面で支えた超保守派は最初から反中国ですが、そのためには(一時的かもしれませんが)ロシアの協力を得ていたはずです。

 トランプが共和党全国大会で大統領候補となる直前の2016年6月にトランプ陣営の選挙対策本部長(つまり資金担当)となったポール・マナフォートは、ロシアや親ロシア時代のウクライナのビジネスで巨額資金を得ており、さすがにそれが明らかになり同年8月に辞任するとその後任がスティーブ・バノンとなりました。

 つまりロシアゲート疑惑とはトランプ本人ではなくバックとなった超保守派に対するものであるはずですが、どうもその超保守派がホワイトハウスに送り込んだスティーブ・バノンが疎まれたため、仕掛けたマッチポンプだったような気がします。

 習近平がいち早くプーチンと共同声明を発表しているように、これからは米国・中国・ロシア・北朝鮮の微妙なバランスで考える必要があり、トランプは北朝鮮対策だけを優先できる状態でもありません。しばらく放置することになりそうです。