中国国有企業9割不正 反腐敗へ異例の公表

 表題は本日(7月12日)付け日本経済新聞朝刊1面トップの見出しです。

 日本経済新聞社まで、本年秋に迫った中国共産党大会に向けて勢力拡大を図る習近平の「プロパガンダ」を請け負ったのかと思うような記事ですが、要は日本の会計検査院に当たる中国審計署が最近公表した中国国有企業大手20社への調査結果で、その9割にあたる18社で不正計上が発覚したというものです。

 またその18社による売上高の水増しは、2015年までの数年間の合計で2000億元(3兆円)に上るそうですが、そんな控えめなものではないはずで「氷山の一角」です。

 しかしこの18社の中には中国石油天然気集団公司(中国最大の石油・天然ガスの生産・供給および石油化学製品の製造・販売グループ)、中国化工集団公司(中国最大の化学グループで本年6月にスイスの農薬世界大手を5兆円で買収)、東風汽車公司(上海汽車第一汽車と並ぶ中国3大自動車製造会グループで日産やホンダとも合弁)、中国宝武鋼鉄集団有限公司(2016年10月に宝鋼集団と武漢鋼鉄集団が統合した中国最大級の国有鉄鋼製造グループ)、中国船舶重工業集団公司(世界有数の船舶製造グループ)などが含まれています。

 これらは中国国有会社のなかでも中国政府(国務院)が直接所管する「中央企業」と呼ばれる大型国有企業で、その資本は中国共産党の国有資産監督管理委員会が独占保有し、その経営も中国共産党から任命された党幹部が行います。

 「中央企業」の中には中国石油天然気集団公司の子会社であるペトロチャイナのように「上場会社」もありますが、だいたいが資産や事業の「ほんの一部」を市場に売り出しているだけで、「中央企業」を含む国有企業のすべては中国共産党の所有財産となります。

 「中央企業」は徐々に再編が進んでおり現在は101社となっていますが、これに地方政府が所管する企業や、所有権と経営権のどちらかだけを中国政府や地方政府が所有する企業なども加えた「いわゆる国有企業」の総数は30万社に上ります。

 これは中国にある全企業1600万社の2%にすぎませんが、この国有企業が中国経済の約20%を動かしているとも言われています。改めて考えると中国共産党は「世界最大の企業グループの所有者」であり、中国共産党は常にその支配権(つまり利権の配分権)を巡って内部で暗闘を繰り返していることになります。

 しかし中国共産党としてもこの「巨大な財布」を完全なガラス張りにしてしまうはずがなく、ここは5年に1度の中国共産党大会に向けて習近平が綱紀粛正を前面に出しながら、これら国有企業(とくに規模の大きい中央企業)の主導権を一気に江沢民派から奪い取ってしまおうと画策していることになります。

 現在の中国共産党中央政治局常務委員の7名は、もちろんトップが習近平、No.2が首相の李克強ですが、No.3の張徳江、No.5の劉雲山、No.7の張高麗の3名は江沢民派です。

 そのうち張徳江中国東北部朝鮮半島の利権を完全に掌握しており、劉雲山金正恩のカウンターパーティーです。この辺は4月14日付け「金正恩の命運を握る瀋陽軍区とは?」にも書いたように、習近平がほとんど切り込めていない利権となります。

 そして張高麗は、江沢民が支配する石油閥が必ず1名確保する政治局常務委員のポストについています。この辺は習近平が是が非でも江沢民派から奪い取っておきたい利権となります。

 習近平は、胡錦濤の流れを引く共青団の代表である首相の李克強ともしっくりせず、今のところ明らかな盟友はNo.6で綱紀粛正を任せる王岐山しかいません。No.4の兪正声習近平と同じ太子党ですが、立場は中立です。

 そこで今秋の共産党大会では、内規の年齢制限(常務委員就任時に67歳以下)があるため習近平李克強以外の5名は交代となります。習近平は内規を変えて王岐山を留任させ、李克強を祭り上げて後継首相に据えようとも考えているようですが、さすがに無理がありそうです。

 しかしこれは突拍子もない話でもなく、李克強は5年後の共産党大会でも67歳でさらに再任されてトップとなる可能性もあるため、ここで力を削いでおく必要もあるからです。

 さらにここにきて綱紀粛正の責任者である王岐山まで、不正蓄財のスキャンダルが米国に逃亡した中国人スパイに暴露されています。王岐山が今秋で引退するにしては不穏な動きになります。

 また今秋の共産党大会ではポスト習近平を争う2人の新任常務委員が昇格するはずで、少し前までならともに54歳の胡春華広東省書記)と孫政才重慶市書記)が「当確」と考えられていましたが、これもここにきて流動的となっています。胡春華共青団孫政才江沢民に近いとされているからです。

 いずれにしても今秋の共産党大会まで暗闘は続くはずで、それに合わせて国有企業の不正ももっと出てくる可能性があり、日本経済新聞ももっと忙しくなりそうです。