急落したビットコイン

 本誌はビットコインを含む仮想通貨の価値については一貫して「懐疑的」ですが、本日の記事は安直に警戒心を煽るものではなく、あくまでも冷静に考えているつもりです。

 ビットコイン価格は本年3月の1000ドル前後から6月11日に一時3000ドルを突破しましたが、昨日(7月16日、休日でも取り引きできるようです)夜間には一時1800ドルを割り込み、本日(7月17日)夕刻も2000ドルを挟んだ値動きとなっています。

 6月中旬までビットコイン価格が急上昇した大きな理由の1つは、日本の金融庁が4月から「法整備らしきもの」をかけたからです。実際はビットコイン取引業者を登録制にしただけですが、それにより金融庁ビットコインなど仮想通貨全体に「お墨付き」を与えたような印象になってしまい、日本人が一気に買い上げてしまったからです。

 そのビットコインブロックチェーン(分散台帳とでも訳します)を維持する作業に対してビットコインが支払われていますが(それを「採掘」と呼んでいます)、だんだんその効率が落ちて作業が滞るようになっているため、利用者グループが新しい作業の枠組みを8月1日からスタートさせると宣言していました。

 つまりビットコインが複数に分裂する可能性があり、これまでのようにスムーズに決済や送金ができなくなる懸念からの価格急落のようです。仮想通貨の「価値」とは、突き詰めて考えると「次の瞬間に転売できる」ことでしかなく、そこに疑念が出てしまうと価値が大きく棄損することになります。

 もう1つ過去に似たようなケースがあり、2014年2月に世界最大級のビットコイン取引所だったマウント・ゴックスから大量のビットコインと現金が「なくなってしまった」という事件がありました。そこでビットコインの「価値」のよりどころである安全性(なくならないという意味)が棄損してしまい、2013年には一時1000ドルをこえていたビットコイン価格が長く2~400ドルで低迷することになりました。

 そのマウント・ゴックスの社長(フランス人)の裁判が7月11日にやっと始りましたが、これはビットコインが10ドルくらいの時から顧客のビットコインをくすねていたコソ泥で、それが1000ドルまで上昇したためパンクしただけです。裁判では被告の弁護士が珍妙な理屈を持ち出していますが、仮想通貨とは?などと始めるのではなく現金28億円の窃盗だけで片付けてしまうべきです。珍妙な判例などを作ってしまうと世界中が迷惑します。

 つまりビットコイン価格は、4月の金融庁の「お墨付き」で加熱していたところに、「価値」のよりどころである流動性や安全性に疑問がついたことによる価格急落のはずで、しばらくは低迷すると考えておくべきです。その後は世界の金融情勢次第で、まだ新たなバブルを求めるような投資環境であれば再上昇するはずです。

 さて今回の価格急落は、ビットコインより最近急拡大していたイーサリアムやリップルの方が大きく、仮想通貨全体の時価総額もピークの1000億ドル超から一時は600億ドルほどになりました。

 イーサリアムは新しい仮想通貨に対してプラットフォームを提供して大きくなっている特徴もあり、価格も3か月ほどで8倍となっていましたが、現在はその高値から半値以下となっています。
 
 また「胴元」がよくわからないビットコインとは違い、イーサリアムはVitalik Buterin(1994年生まれのロシア人)なる考案者(創業者?)も特定されています。背後に黒幕がいるようですが、すでにかなりの創業者利得を得ているはずです。

 さらに少し前まではそのイーサリアムのプラットフォームを利用したICO(Initial Coin Offering)なる資金調達も活発に行われており、2017年に入ってから70以上の仮想通貨が邦貨換算で1000億円近くも調達しています。あくまでもイーサリアムでの調達ですが、そのイーサリアムもドルなど法定通貨と交換できるため、理論的には全くの「無」から「価値」が生み出されていることになります。

 よく実体のない仮想通貨を大量に売り出す「仮想通貨詐欺」がたくさん出ていますが、現金を対象にするか仮想通貨を対象にするかの違いだけで、ICOと仮想通貨詐欺は「紙一重」のはずです。

 またICOとは簡単に言えば「仮想通貨の2階建て」となり、それだけ崩れた時の下落幅も大きくなります。たまたまこれまではイーサリアムの方が法定通貨より値上がりすると信じられていたため法定通貨への交換がほとんど行われず(イ―サリアムの)価値が維持され、それをプラットフォームにする新しい仮想通貨の価値も維持されていただけです。

 あくまでも仮想通貨は「1階建て」くらいに留めておくべきでしょう。